113.銀行

 ここ数年で銀行が大きく様変わりしたように思う。銀行といっても地方銀行ではなく、都市銀行である。某都市銀行では入り口に受付があり、ここには数人の行員がいるのであるが、窓口には行員が1人しかいない。これでは来た人を捌くことさえできない。業務を遂行させることはほとんど不可能である。したがって待合用のソファーは人でいっぱいになる。

 先日相談事があり銀行を訪れると、珍しく客が少なかった。順番待ちの整理券が発行され、XXX番と印刷されていた。窓口で人が対応しているわけでもないし、待合のソファーにもほとんど人がいない。にもかかわらず呼ばれない。どうしたことかと思い、受付の行員に確認してみた。お客様の番号はXXX番で、その前に順番待ちのお客様が3名おられます、との返答であった。行内に客は2名しかおらず、先ほどから呼ばれるわけでもなくじっと座っている。銀行への相談事は壁側にパーテーションで仕切られた数か所が使用されている。3か所あるが、客が入っているのは1ヵ所だけである。他は空席である。いったいどうなっているのか? 通常の銀行は窓口の後ろが奥までずーーっと見渡せるが、ここは壁で仕切られており全く見えない。この銀行にはあと何人の行員いるのか? この壁の奥でどのような作業が行われているのか? あまりにも長い待ち時間にしびれを切らし、あとどのくらいの待ち時間かを確認した。30分~60分だといわれた。とても待てる時間ではない。いったん退却である。

 銀行が言うには、ネットで予約をしていただくと確実ですという。早速ネットで予約を取ることにした。しかし、予約欄見てびっくりである。数日後まで予約がびっしりと入っている。ようやく空きを見つけたが、朝の早い時間で都合が合わない。結局自分の行きたい時間ではなく、行員が暇なときに来いという感じである。これでは緊急の時には役に立たない。

 現金の引き出しや預け入れはATM、振り込みや支払いはネットバンキングで行える。しかし、相談は行員でなければできない。唯一銀行に残された業務がこれではほとんど利用価値がない。通帳にはわずかしか入っていないが、すべて下して解約である。もちろんこれも予約をして数日後に行った。その足で地方銀行に口座を作りわずかな金額を入金した。こちらは予約なしですぐに窓口へ案内された。

 コンビニで現金を下ろせるようになったころから銀行というもののありがたさが薄れてきたように感じる。さらに、定期預金の金利の低さである。1年物の定期預金の金利が「0.002%」である。100万円預けて利子は20円である。これでは銀行のありがたさなどはみじんも感じない。現金を自宅で管理すれば強盗や火災が心配である。銀行ならこれらの心配は無用である。今や銀行は、現金を強盗や火災から確実に守ってくれるだけの存在になりつつある。これなら利子がつかなくても文句は言えない。むしろ保管料が必要かもしれない。