ランディングネット 

 

 ランディングネットとは、魚を釣った時にすくい上げる網のことである。こう説明すると、船釣りや磯釣りで大物を釣った時に、暴れて逃げられないようにすくい上げる網を思い浮かべるのではないだろうか? これはそのような大物をすくい上げるのではなく、わずか20cm程度の魚をすくうのが主である。ひょっとするかもしれないという期待を込めて、30cmオーバーも可能なように網を深くしてある。ここに出てくるネットは、魚を逃がさないようにすることが目的ではなく、魚を傷つけない(人が手で触ることでも魚を傷つける)ことが主な目的で使用される。

 ここに取り上げたネットの大半は水に沈んでしまう。木製でありながら水に浮かばない。主に渓流で使用するネットであるため、落とすと水流に紛れて行方不明ということになる。したがって、ネットはしっかりとピンオンリールで釣り人に装着されている。ではなぜ、このような水に浮かばない材質を使用するのか? それは何と言っても美しさと耐久性である。主に黒檀を使うのであるが、これは硬く、目が細かいので表面が非常に美しい。ただ、木が脆く加工が難しいという問題がある。これさえクリアすれば非常に素晴らしいネットが出来上がる。この美しい表面に漆を塗り、さらに光沢を出す。漆塗りの難しさはその性質にある。これについての説明は専門的で長くなるので避ける。設備を持たない素人がこの作業をしようと思えば、それなりの覚悟が必要となる。つまり、とんでもない時間を必要とするのである。ここに登場するネットの多くは、塗装に1年程度は要している。長いものになると2年近くを要している。この時間の経過が美しさとして写真に表されていないのが残念である。