暗黙の了解事項

 秋が深まり、カキの実もいい色に色付いてきた。そろそろ収穫時期ですよ! と色で知らせてくれる。今以上に淡い色であれば、まだ硬くてねっとりとした美味しい干し柿にはなりませんよ。これ以上色が濃くなると、熟しすぎて干し柿にしても表面が固まりませんよ。これらを色で知らせてくれる。非常にありがたいお知らせである。今年は五十数個のカキの実を収穫した。それらはすべて干し柿にして、冬の間に食べることになる。個数が少なかったので、去年以上に大きな実が収穫できた。カキの実を収穫するにあっては、守らなければならない大事な取り決め事項がある。取り決めというよりは、暗黙の了解事項がある。これを守らないと、世間から冷たい目で見られることになるのである。誰も決して口に出すことはない。それだけにこのことを知らないと大恥をかくのである。たかがカキの実を収穫するだけなのに、世間の批判を受けてはたまらない。自分の敷地で育てているカキでありながら他人にとやかく言われたくない、というのが本心である。

 それではその暗黙の了解事項とは何なのか? それは、すべての実を収穫せず、木のてっぺんに1個残すのである。なぜ? この残したカキを「木守り」といって、来年も多くの実がなりますように、との願いを込めるのである。しかし、わが菜園ではちょっと意味合いが違っている。それはこの後、寒い冬がやってくるのと同時に、山からシジュウカラ、メジロ、ウグイスなどがやってくるからである。冬になると山にはエサがなくなり、里山にエサを求めてやってくるのである。そこにもエサがなければ、小鳥たちはがっかりするであろう。少しでも手助けをし、今年もここへ来てよかった、来年もまたここへ来よう、と思ってもらうためである。小鳥たちが山から下りてくるころには、カキは十分に熟しトロトロになっている。ちょっとくちばしでつつくだけで、甘い果肉を食べることができる。「ウエルカム・フルーツ」というわけである。これで一息ついてもらい、あとはじっくりと春を待つ害虫を退治してもらえばいいのである。ここでたっぷりと栄養を取り、体力を養ってもらいたい。そして、春になれば山へ戻り多くのこどもを育てもらいたい。少子化でも書いたように、スズメに関してはあまり多くのこどもを産んでいないように思う。しかし、これらの小鳥たちには多くのこどもを産み、育て、そしてまた来年もここへカキを食べに来てもらいたい。わが菜園には害虫の卵や幼虫があちこちに潜んでいる。できることならそれらもすべて食べてもらいたい。特にブドウやイチジクの木にはカミキリムシの幼虫がかなり潜んでいるようである。専属で退治をしてもらえるのであれば、毎日ミカンの輪切りを提供することもやぶさかではない。何とかWin-Winの関係を結びたいと思っているがまだ実現できずにいる。カキ3個ではWin-Loseの関係になってしまうか? ちょっと厚かましいお願いかもしれない。

<まもなく完熟!>

 

<うーん、かなりの太っ腹! これは完全にLose-Win?>