2.ロードレーサー

 現在、ロードレーサーを2台所有している。初代(台)は今から20年以上も前に購入したものである。フレンド商会西国分寺店のオーダーメイドである。フレームはクロムモリブデン鋼で、通称“クロモリ”と呼ばれている。鋼と名が付くように鉄である。クロムを含んでいるが、ステンレスのように耐腐食性はない。やや重さはあるが、剛性があり乗りやすい。初めてロードレーサーに乗った時の感動は、今もはっきりと覚えている。ペダルを踏んだ力が、そのまま車輪に伝わるといった感じである。ハンドルも遊びがなく、ちょっとひねるだけで向きがすっと変わる。店から自宅まで乗って帰るのが怖いくらいであった。この初代のホームグランドは多摩川のサイクリングロードであった。府中からサイクリングロードを経由して狛江まで行く。そこからは一般道路で住宅街を抜け、二子玉川まで行く。往復で42km、マラソンと同じ距離である。結構いい運動になる。当時、玉川高島屋の地下1階にあった十五夜という店で、おにぎりを買うのが楽しみであった。このおにぎりを多摩川の河川敷で食べるのである。普通のおにぎりと違って、三角形のどの部分から食べても、最初から最後まで具が入っている。つまり、サンドイッチのように、ごはん+具+ごはんというように3層構造になっている。お気に入りの具は梅干しであった。これは最高に旨かった。口中が唾でいっぱいになるくらい酸味が強く、疲れが一気に吹き飛んだ。そんなおにぎりを食べながら、多摩川の四季が堪能できた。春は、まだ冷たい風を体全体に浴びて、緑が芽吹いてくる爽やかさを感じながら走る。夏は、むせ返るような草いきれと、熱風でめまいがしそうになりながら走る。濃縮された汗が目に滲みる。ロードレーサーに取り付けたペットボトル2本ではとても足りない。道路沿いにある自動販売機を見つけては購入する。秋は、府中近辺の河原のススキが、太陽に反射して金色に輝く中を走る。まるで黄金色の雲の中を走るようである。冬は、寒風で涙と鼻水を流しつつ、痛いくらいの寒さの中を走る。手足の先と耳は感覚がなくなってしまう。何度このパターンを繰り返しただろう。何回走っても新しい感動がある。それほど自然というのは、毎回素晴らしい演出をしてくれる。

 2代(台)目は、去年Y‘s Road神戸で購入した。カーボンフレームを購入したかったが、予算が合わず、アルミフレームにした。その分付属品をややいいものにした。初代から比べると、付属部品などは結構進歩している。しかし、自転車というものは最初にできたものが、それなりにうまくできていたらしく、大きく形状や機構は変化していない。最終的には人力勝負である。最近は動力部分が経年劣化を起こし、年々速度も走行距離も落ちてきた。先日などは、坂道で子供を乗せたおばさんに追い越された。えっ、と思ったが、原因はすぐにわかった。さすがに電動アシスト自転車はすごい。

                           <初代>

                          <2代目>