サボテンの木

 かわいいサボテンが、それに見合うような小さな植木鉢に入って売られていた。1個1個はかわいいのであるが、数個並べると、何か違和感がある。かといって、1個ではさみしい。ではどうするか? よく見かけるのは寄せ植えというやつである。背の高いもの、低いもの、幅のあるもの、そうでないもの等、それらをうまく配置するのである。これは見た目も美しく、それぞれが生かされた飾り方である。しかし、配置の仕方によってはセンスを問われる。その後の育ち方で、再配置が必要になるかもしれない。

 これらは全て、人間の側から見たものである。このような表現をするとちょっと違和感があるかもしれない。感情のない植物に対して、何をどのように配慮すればよいのか? それよりも、そのようなことを考えること自体がおかしいのではないか? と言われかねない。しかし、植物には植物としての感情(?)があるのである。アレロパシーというものがある。これは、ある特定の植物が、他の植物の発芽や生育を妨げる物質を発散したり、害虫を忌避したりする作用のことである。セイタカアワダチソウ、サクラ、アスパラガス、ヨモギなどが有している。花の寄せ植えが売られているのをよく見かけるが、決してそれらすべてが、居心地がいいとは思っていないのではないだろうか。ある種の花は、徐々に右に傾き、またある種の花は左に傾きして、どんどん広がっていくのはそのせいではないだろうか。地下ではもっとすさまじい戦いが繰り広げられているかもしれない。

 というようなことを考えると、サボテンの寄せ植えは避けたほうがよさそうである。サボテン同士の、ののしり合いの声が聞こえてくるとうるさくて仕方がない。とげがあるだけにもっと激しくなるかもしれない。そこで考えたのが、このサボテンの木である。これなら、それぞれが一定の区画を確保でき、互いに干渉することもなく生活できる。しかも、見ている側もそれなりに満足が得られる。1本の切り株にいろいろなサボテンが育っているようで楽しい。全面に植えているので表裏がない。どこから見てもそれぞれの景色が味わえる。しかし、この満足感も人間の側から見たものであり、植物の気持ちはほんの少ししか配慮されていない。ひょっとすると、それさえとんだ有難迷惑ということになりかねないが・・・。