アリパワー

 アリとイチジクで書いたように、アリのパワーについての問題が解決していない。道端で巣をつくり、そこへハエや小さな虫を運んでいるのをよく見かけた。自分の体よりはるかに大きな獲物を1匹のアリが運んでいるのである。これを見ると、アリの持つパワーは相当なものであることがわかる。しかし、パワーがあるといっても、自分の体重の数倍、数十倍の重さのものを運ぶ程度である。いろいろ調べたがアリの体重は0.001~0.004g程度である。こんなアリが100gもあるイチジクを運ぶことができるのだろうか。体重の10万倍である。もし運ぶとすれば何匹くらいが集まるのだろうか。そしてどのような方法で運ぶのだろうか。これは何としても解明しなけなければならない。

 9月某日、8月に落下したイチジクはきれいに食べられていた。冬に向けて、そろそろ次の獲物をしとめたい時期ではないだろうか? できれば同じイチジクがよかったのであるが、手に入らなかったので、ベルギーワッフルを使用して実験をすることにした。重さは35gである。イチジクに比べればかなり軽めではあるが、アリからすればとてつもない重量である。イチジクが落下したと思われる場所に設置した。翌日見に行くと、なにやら様子が変である。ワッフルを移動させるような気配がない。それどころか、ここの下に巣をつくりそうな勢いである。砂粒を大量に持ち込み、周りを囲み始めた。数日経って見たところ、ワッフルの形が変わっている。明らかに小さくなっているのである。しかし、周りにアリに行列があるわけでもなく、小さく切り刻んだワッフルを持ち歩いているアリも見かけない。さらに数日経つと、ワッフルはさらに小さくなっていた。これはどう考えてもおかしい。恐る恐るワッフルを持ち上げてみると、何とワッフルの下の防草シートに穴があけられていた。なぜ??? どうやら欠陥品であったようである。前回の時点では破れることはなかったが、紫外線による経時変化で脆くなっていたのだろう。実験失敗である。

 再度実験の開始である。前回は欠陥商品(注1)をアリに見破られたので、実験方法を変えることにした。板を敷いた上に、探し回ってようやく手に入れたイチジクを置いた。これなら地下へ進出することはできない。移動するとすれば横方向のみである。イチジクを置いた場所がわかるように、板にテープで「×」を付けた。さて見事に動かせるのだろうか? 前回同様に砂粒を運び込んでイチジクの周りを固め始めた。移動させる気配はない。待てど暮らせどこの状態は変化しなかった。徐々にイチジクは小さくなり10日後には完食となってしまった。移動していたイチジクは偶然だったのだろうか? どう考えて自然落下したものが存在する位置関係ではない。結局、納得がいかないままの結論となってしまったが、まだ、わずかにアリパワーを信じている。菜園主の取り分を考慮してもらいたい、という強い気持ちをもちつつも、来年に期待をしたい。

 ところで話は変わるが、「地球上に存在する人間とアリの重さは等しい」という内容を見かけた。信じがたいことではあるが、これが事実であるとすれば、いつまでも今の場所に住み続けられる保証はない。いつ、どこへ運ばれるか分かったものではない。

(注1)まだ在庫が残っていたので、それらについてはメーカーに返品し、代金を返金してもらうことにした。もちろん、アリに破られるくらい軟弱であることを伝えた。

 

<徐々に小さくなるワッフル>

 

<ほとんど形が分からない>

 

<ワッフル完食>

 

<定位置にイチジク設置>

 

<アリの集中攻撃>

 

<一気に形状分解>

 

<わずか10日で完食>