ペンケース

 
 

 真竹のペンケースである。別件で真竹を使用したときの残りである。アトリエ外での作業時、筆記具があちこちに散らばり片づけるのに苦労していた。これならキャップを取れば必要なものをすぐに取り出せる。使用後はそこへ戻せばなくすことはない。

もの自体はなんということもない単なる竹筒である。これの難しいところは印籠のはめあいである。茶筒の本体と蓋のはめあいと同じである。旋盤があれば外面、内面共に簡単に削り取り、きっちりとしたはめあいが可能である。手作業でのはめあいとなるとかなり時間を要する。やすりとサンドペーパーを用いて少しずつ研磨していく。はめあいの難しさは、ほんのわずかでも削りすぎると蓋がぶかぶかになってしまうところである。下を向けると蓋が落ち、中身が全て出てしまう。これはやった者でないとわからない繊細さである。

 表面には模様(?)として墨で筋を入れた。無造作ではあるがそれなりの美しさが感じられる。と、書けばそれらしく聞こえるが実情はそうではない。この模様が合うところが最もしっくりと閉まる。要するに真円になっていないのである。閉めるたびに位置を探していたのでは、時間がかかって面倒である。そこで思いついたのが上下に印をつけることである。「矢印」では作品の価値がなくなってしまう。絵にしようと思ったがセンスがない。それならば、と「線」にした。これなら見た目もセンスもそれほど気にならない。十分に満足のいく実用的なペンケースである。今も作業机の上にどっしりと構えている。