小物入れ(赤)

(縦:97×横:150×高さ:28mm)

 

 この材質は黒檀である。あまり質のいい黒檀ではないので、黒とこげ茶が縞のような模様になっている。真っ黒な黒檀よりはきれいに見える。こぶ材のようなきれいな木目が入った材質ではないので、表面は漆で光沢仕上げをしてある。つるつるピカピカである。内部はちょっと上品で贅沢に見えるように赤のフェルトを貼ってある。フェルトは木や金属と違って、伸縮性があるので採寸が難しい。接着剤の選択はさらに難しい。影響がフェルト表面に出ないものでなくてはならない。と、いうことでいろいろ試した結果、影響が出ない接着剤を選択し、きれいに貼りつけた。乾燥させるために、蓋を置けた状態でアトリエに置いていたが、なんだか落ち着かない。異臭がするのである。便器に頭を突っ込んだような臭いである。数日経てば臭いは消えるだろうと思って放置していたが、一向に消えなかった。ふたを開けた瞬間にこの臭いでは、とても日常的に使用することはできない。フェルトを外し、接着剤を除去してやり直しである。残り2種類の接着剤から接着力と臭い、布への影響を勘案しながら選択した。今度はうまくいった。においもなく、表面にしわやたるみも出ず、いい仕上がりである。

 ここでいつもながらの悩みが発生した。これを日常的に使用することが困難であることに気が付いた。物は作ったが、中に入れるものがないのである。目的が見つかるまで、ふたを開けてきれいな赤いフェルトを眺めることとしよう。