コーヒー豆の焙煎

 あちこちで書いているようにコーヒーはよく飲む。深煎り、浅煎り、産地等、種類は多数ある。その時々の気分で種類を選ぶ。しかし、飲みたいときにそれらの在庫があるとは限らない。しぶしぶ好みでないものを飲む場合もある。かといって、飲みたいときに飲みたいものをストックしておくほど余裕はない。そんなこんなで、いろいろと考えをめぐらしたところいい案が浮かんだ。生豆をストックしておくのである。そして必要に応じて焙煎して飲むのである。なじみのコーヒー焙煎店で生豆を譲ってもらった。しばらくは放置されていたが、いよいよ飲むコーヒーがなくなり焙煎することとなった。豆の種類はケニアである。この豆は小さく、持ち味の酸味を生かすためにあまり深煎りをしないのが好まれる。しかし、今飲みたいコーヒーは濃い目のものである。仕方なく豆の価値を損なうかもしれないがやや深煎りにすることにした。

 焙煎を始めて5分もするとふつふつという音がひっきりなしにし始めた。なんとなく焙煎をしているという雰囲気を出してくれる。10分すると豆の色はややきつね色になり、徐々に仕上がっているということを感じさせてくれる。このころから豆の中央部にある仕切りのようなところからかすが落ちだす。15分すると十分に飲める程度の色合いになってくる。このころからふつふつが、時々ぱちぱちに変わってくる。市販のエチオピアであればそろそろいい感じの色合いである。しかし、今飲みたいコーヒーの色合いではない。もっと激しく焙煎したものである。20分経つとかなり濃い焦げ茶色になってきた。しかし、まだである。心の叫びがまだ焙煎を命じている。さらに5分焙煎する。香りもやや焦げた感じがしないでもない。色もほぼ満足できる色になってきた。いろいろなものを焙煎してきた経験からすると、ここからは一気に進行する。もう少しもう少しが命取りになることは十分に経験している。心を鬼にしてここはいったん火を止めることにする。豆が冷めるのを待って試飲である。ミルが香ばしいいい香りを醸している。これだけで十分成功したことを知らせてくれる。ドリッパーに入れたコーヒーの粉にお湯を注ぐと、ぷっくりと膨らんでくる。しばらく蒸らして豆のエキスを十分に出せる状態にする。その後数回に分けてお湯を注ぐと、香ばしいコーヒーの香りが当たり一面に漂う。これはもう旨いに違いないことを物語っている。まろやかで、角がなく苦み酸味が程よくマッチした美味しい一杯を飲むことができた。

 豆をかじってみることでも、焙煎具合と香ばしさを確認することができる。生豆は非常に硬くやや青臭さを感じる。10分焙煎すればほんのりと香ばしさを感じることができる。やや硬いがパリッという感じで割れる。15分だと、パリパリ感がさらに増し、それと同時に香ばしさが増す。ここから先はそれらがさらに増す。あとはその程度をどこで止めるかの判断となる。