ミジンコ

 近所の方からハスの種をいただいた。説明書によると、粘土質の土を入れて水の層を10cm以上にする、となっていた。早速、土と水を入れたが、濁った水がなかなか澄んでこない。2日目でようやく水が澄んできた。さらに水をきれいにしようと、毎日のように水を継ぎ足していたところ、何やらうごめく小さな生物に気が付いた。目を凝らしてよく見ると、大きさは1mmくらいでゆっさゆっさと動いている。その数たるや多量である。どうやらミジンコのようである。しかし、ここに入れたものは菜園の土と井戸水だけである。にもかかわらず、大量のミジンコが発生した。何やら手品を見ているようである。何度見てもミジンコである。数日後に見ても、やはりミジンコである。

 なぜミジンコが発生したのかを調べなければ、気持ちが悪くて菜園作業に専念できない。『ミジンコは卵から発生し、中には耐性卵といって、乾燥に強く飛来して土などに混ざっていることがある』らしいことがわかった。今回、ハスを育てるにあたり、植木鉢2個の底穴をふさぎ、菜園の土と井戸水を入れた。すると、両方の植木鉢にミジンコが発生した。この場合、原因は土なのか井戸水なのかわからない。ただ、井戸水については数年前、飲料水に適するかどうかの検査に出したことがある。検査項目は雑菌や有害化学物質、pH,臭気、濁度等で、ミジンコの卵までは検査項目には載っていなかった。そこで、バケツ2個を用意し、菜園の土と水道水を入れて観察することにした。その結果、3日後に1個のバケツにミジンコが1匹発生した。その翌日にはもう1個のバケツにも発生した。これでミジンコの発生原因は菜園の土ということになるのだが、よく考えてみれば、菜園には井戸水をじゃぶじゃぶと撒いているので、その影響も考えられる。確実に言えることは、水と土を入れるとミジンコが発生するということだけである。

 メダカにはフレーク状のメダカ専用のエサを与えていた。これほど多くのミジンコが採取できるのであれば、生のミジンコの方が餌としては魅力がある。目の細かいネットでミジンコを掬い取り、メダカ池に入れた。一斉にメダカがやって来て美味しそうに食べ始めた。やはり新鮮なエサの方がいいのであろう。水底へ逃げるミジンコを追いかけてメダカが勢い良く動き回っている。簡単に発生したミジンコであるが、飼育を続けるのは難しいらしい。とはいえ、まだしばらくはミジンコが絶滅することはないだろう。美味しいエサが食べられて、メダカも満足そうである。

 ミジンコの発生には驚かされた。通常では絶対に結びつかない因果関係である。わが菜園の土の中には、数十種類の雑草の種や害虫、数えきれないくらいの種類の微生物などとともに、不思議な生き物も存在していそうである。もちろん、人間にとって有用な物質が含まれている可能性もある。条件がそろうまで、存在を気付かせず、じっと耐え忍んでいるのだろう。ある日突然、想像すらしない生物が発生するかもしれない。なにやら、夢があるような怖いような不思議な気分にしてくれる。
 
<スイレン鉢でユラユラ>
 
 
 
<ミジンコたち>