66.ハンモック

 ハンモックの優雅さ(?)は、以前「ひまつぶし」のコーナーで書いた。季節がいい時もそうでない時も、ここでゆらゆらと揺られながら作品の案を練っている。寒い日はちょっと厚手の服を着こみ、シュラフにくるまっている。まるでミノムシが横たわっているような感じである。

 見た目が優雅なハンモックにも欠点がある。夏はハンモックのネットに蚊取り線香を2個ぶら下げなければ、蚊の攻撃が激しくて安心して寝ていられない。これだけであれば何の問題もないのであるが、無風時はまともに頭の下から煙が上がってくる。まるで燻製状態である。冬は寒さが厳しく、せっかく入れた熱々のコーヒーが、あっという間にアイスコーヒーになってしまう。体を温めようと思って入れたもので、よけいに身体を冷やしてしまうことになる。最近では携帯用のポットに入れて飲んでいる。もっとも見た目との違いが出るのは気持ちよさであろう。確かに横たわった瞬間は非常に気持ちがいい。きれいに身体に沿ってネットが広がり、体全体を覆ってくれる。ゆっくりと揺らしていくと、体の左右にネットから心地よい圧力を感じる。身体の一点に圧力が集中するということはなく、ネット全体でうまく体重を受け止めてくれる。したがって、ずーーーーと気持ちのいい状態が続くはず・・・であった。ところがそうではないのである。どういうわけか、30分もすると腰が痛くなってくるのである。痛いというよりはだるくなってくるといった方がいいかもしれない。平らなところなら体を横に向けることもできるが、ハンモックのように弓なりになったところでは横になれない。それでも下半身をねじってみたり、ハンモックの上の方に移動して体を立ててみたりしながら、腰の負担を軽減させなければならない。

 結局、どんなに気持ちのいいものでも、限度というものがあるということである。いつまでも怠惰をむさぼることはできないようにできているのである。こうなれば、さっさとハンモックから降りて、創作活動の世界へ再突入である。月面探査機が地球へ戻る際、大気圏への突入の高温に耐えるように、枯渇しそうな創作力を絞り出すことに耐えなければならない。優秀な人は「芸術は爆発だ!」と、いえるくらい活力があるが、そうでない人は単なる苦しみでしかない。苦しんでまでやる必要があるのだろうか、そうではなく苦しむことを楽しんでいるのかもしれない。必ず何かが起きることを知っているから、それが何かを知りたいのである。