カキ(その2)

 我が家のカキは最下位にランクされるような渋柿である。実は小さく、かつ種が多い。よって干し柿にした場合、ほとんど食べるところがない。つるつると滑るカキを、一生懸命になって皮をむく。それらを干し、頃合いを見ては柔らかくなるまで揉みほぐす。少しでも柔らかく美味しく仕上げようと試みる。しかし、かけた手間暇には全く見合わない干し柿が出来上がる。1個、2個のはなしではない。200個程度つくるのでその苦労たるや相当なものである。もみほぐしている手はパンパンである。これに要する時間で他人の肩を揉めば、どれほど感謝されることやら。

 保存性ではやはり干し柿にするしかないだろう。しかし、美味しく食べるにはもっとほかの方法があるかもしれない。よく耳にする渋抜きというやつである。いろいろと調べてみると、意外と簡単に渋が抜けそうである。もっとも簡単に行える方法は、焼酎を使ったものである。渋柿のヘタの部分を焼酎(35%以上のもの)に数秒間浸けたものを布巾でくるみ、ビニール袋で10日程度寝かせるという方法である。焼酎に漬け込むのではなく、ヘタの部分を数秒間浸けるだけでいい。なぜこれで渋が抜けるのか? 文章を見るだけではどうしても納得がいかない。「甘柿は熟すると種からアセトアルデヒドを分泌し、水溶性のタンニン(渋みの元)を不溶性に変化させ渋みを感じなくさせる。この変化を焼酎に代用させる。焼酎がアセトアルデヒドを発生させ、渋柿の水溶性の渋を不溶性にし、渋みを感じなくさせている」ということらしい。この内容からすると、甘柿も渋柿も共に渋味を持っているが、不溶性か水溶性かの違いだけということになる。そうとわかればさっそく試してみることにする。あまり大量に作っても食べきれないので、適度に色付いたものを5個選択し、35%の果実酒用の焼酎にヘタを5秒程度浸けた。それらを布巾で包みビニール袋へ入れ空気を抜いた。これを室温で10日間放置した。

 カキはきれいなオレンジ色になっていた。収穫したときのようなカチカチではなく、かなり柔らかくなっていた。恐る恐る皮をむいて食べてみたが、まだ少し渋みが残っていた。食べた瞬間は甘いのであるが、後味の渋さ加減がどうもすっきりとしない。再度、ヘタを焼酎に浸け、置くこと1週間。皮がむけないほど実はジュクジュク状態である。とろりとしたジュレのような感じである。甘味は前回と同じ程度であるが、渋味はかなり抜けていた。しかし、まったく渋味がないというほどではなかった。これはこれで美味しいが、やはり干し柿にはかなわない。大量の干し柿は冷凍庫で保存し、必要分取り出し解凍して食べる。

   渋柿 + 太陽 = 干し柿 ≒ 肥満

 この等式の干し柿までは認めるが、「≒肥満」の部分は成り立たないことを祈るばかりである。

<中はトロットロ>