タマネギの非力

 冬の菜園は殺風景である。ビニールのトンネル栽培で、わずかな種類の野菜を栽培しているだけである。これでは土地の有効活用に欠けるということで、5年くらい前からムギを栽培し始めた。これで一気に菜園が活気付いた。冬にもかかわらず、一面に緑が広がっているからである。菜園内全面といかないところがちょっと残念である。所々にエンドウマメ、ソラマメ、タマネギ、ニンニクなどの越冬野菜が植えてある。すべてを一カ所にまとめられればいいのであるが、連作障害が出るので、それぞれに適した場所を割り当てている。そのため、緑が所々欠けた状態になっている。

 冬の間は成長がゆっくりで、ほとんど目立って大きくなるようなことはない。この間にじっくりと鋭気を養い、春になると一気に爆発的な成長をするのである。ということで、少し暖かくなってきたので、タマネギの爆発的な成長に期待をしていた。何と一気に爆発したのは、周りに生えている雑草たちであった。冬の寒い間に寒肥をやって成長を促していたが、周りの雑草にすべて盗み取られてしまったのであろうか? 何とも情けない姿で、申し訳なさそうに林立している。野菜のことを知らない人が見ればすべて雑草に見えてしまうだろう。雑草と一緒に引き抜かれてしまうこと間違いなしである。写真の中で、他の雑草よりも背が高くそびえているのがタマネギである。もっとわかりやすく言えば、きれいな配置で伸びた緑色のネギのようなものがそれである。

 ここまで共存してきたので、いきなり雑草をすべて除去したのでは寂しくなるだろう。すでに友情が芽生えているかもしれない。このままの状態で、収穫までそっとしておくことにした。もちろん追肥は雑草の取り分も考えてやや多めに施すことにする。雑草に負けないくらいたくましいタマネギであれば、味もかなり期待ができるのではないだろうか。野性味にあふれ、味が濃く、しっかりと実の引き締まったものができるに違いない。

 ひょっとすると雑草パワーに勝てないかもしれない。これも一つの試みである。今後、果てしなく続く雑草との戦いを考えると、適当なところで雑草と手を組むことも考えておかなければならない。そのためにも、タマネギを実験台として、最適な落としどころを模索しておくことも必要である。ここはひとつ、タマネギに我慢をしてもらうことにしよう。そして、その潜在能力を信じることにしよう。

 と、思ったのもつかの間、そろそろ5月になろうかというのにまったく成長がみられない。通常なら根元のところがぷっくりと膨らんでくるところであるが、まったくネギと変わらない状態である。それよりも葉が大きくなってこない。通常の三分の一程度の太さである。やはり雑草力に気後れしてしまったのだろうか? これでは収穫時期に間に合わない。大急ぎで雑草を取り除き肥料をやって、一気に成長することを期待した。しかし、時すでに遅し、といった感はぬぐえない。まったく成長してこない。実は小さいままである。そうこうしていると、タマネギから完熟のサインが出された。タマネギは完熟し収穫が可能になると、茎の根元からばったりと葉が倒れるのである。

 小さなタマネギを収穫しようと思うが、恥ずかしくて日中にはできない。こっそりと夕方に収穫した。大型のラッキョウという感じである。同時に収穫したニンニクは豊作で、大きさも通常以上であった。並べてみるとよくわかるが、ニンニクよりもはるかに小さいタマネギである。一口で食べられそうなものがたくさん収穫できた。これらはタマネギというよりもペコロスといった方がふさわしい。はたして味の方がどうか? 残念ながら、期待した野性味や力強さは感じられなかった。ただの小さなタマネギであった。今にして思えば、あの時の雑草を食べてみればよかった。間違いなくタマネギよりも美味しかったに違いない。

<タマネギはどこだ?>

 

<ばったりと完熟のサイン>

 

<ニンニクに負けるなよ!>