彼岸花

 いつの頃からか、我が家の庭に彼岸花が咲きだした。今年は3か所に合計数十本の花が咲いている。彼岸花と言えば、真っ赤な花で葉がなく、田んぼのあぜ道や墓地に咲いていたのを思い出す。あまり印象のいい花ではない。我が家のそれは薄いオレンジ色である。赤くないので、多くの花が咲いても、それほど気持ち悪さはない。彼岸花について調べてみたが、あまりいいことは書いていない。おまけに、球根にアルカロイドという毒がある有毒植物となっていた。すーっと伸びた茎に花だけが咲く。それが集団になっている。個人的には葉がなく花だけが先に咲くソメイヨシノにも同じ感覚を持つ。やはり、花と葉がバランスよく配置されて初めて美しいと思うのであるがどうだろうか?

 この彼岸花を撤去しようか、どうしようかと迷っていた時に、「曼珠沙華」という呼び名を目にした。決して悪いばかりの印象でもないか? という気になっているところに、読みかけの本の1文が目に入った。「彼岸花の球根の中で、その年に花が咲くのは約5パーセントであることがわかった」(不思議の植物学:田中修)。これは大変である。一瞬にして、手遅れでは・・・、という思いが頭をよぎった。あわてて庭の彼岸花の数を数えてみた。32本咲いていた。恐ろしい結果を予期しながら、算数の問題を解くことにする。ドキドキした結果は、640個ということになった。これだけの球根がこの庭に存在することになる。これらをすべて撤去するとなると、大変な作業であるため、そのままそっとしておくことにした。これから毎年、彼岸時期に彼岸花を見ることにしよう。しかし、今後どんなスピードで増え続けるのであろうか? 数千、数万、数十万・・・・という球根が、この地下に存在することになるのだろうか? 不安がどんどん大きくなってきた。想像とは恐ろしいものである。想像が想像を生み、想像がつかなくなるほど大きくなるものである。しかし、しっかりと現実を見つめると、取り越し苦労であることに気が付いた。こちらが心配する前に彼岸花の方が先に心配しなければならない。あまりにも庭が狭すぎて、球根密度が高くなりすぎるのである。さて、どうする彼岸花? まさか庭を捨て、家の下へ広がるつもりでは? そうなれば家を持ち上げかねないかも・・・。やはり、想像は恐ろしい。