1.自力車

 「bicycle」をどのようにして「自転車」と和訳したのであろう。現物なしに和訳したのであろうか? そうであれば、これは机上の発想というべきであろう。前後に2つの車輪があり、これが転がっていくのであるから、「自ら」+「転がる」+「車輪」ということになるのだろう。机上の発想ではなく、漢字といえば中国、その漢字を参考にして日本語を作ったのかもしれない。それでは、中国語で自転車は何というのか? 調べてみると、台湾と中華人民共和国(以下、中国という)で字が違っていた。台湾では「脚踏车」、中国では「自行车」となっていた。「车」は「車」のことである。これらの漢字からすると、どうも中国の単語をまねたような気がしないでもない。「自行车」とは、日本語的発想(中国語での意味を無視する)で漢字を見ると、「自ら」+「行く」+「車輪」となる。「行く」のところが「転がる」と変わっているだけである。どちらも発想としては似ている。ほとんど何の苦労もなく動いていくといった意味合いにとれる。そこへいくと、台湾では、「脚踏车」となり、「足で」+「踏む」+「車輪」。つまり、足で踏まなければ進まない車輪、というような感じを受ける。決して、勝手に転がったり動いたりはしないのである。これは机上の発想ではなく、実際に乗ってみてできた漢字という感じがする(決して洒落ではない)。

 長々となぜこのようなことを書くのかというと、日本語の「自転車」という漢字に疑問を抱いていたからである。ロードレーサーに乗りだしてからの疑問であった。これは決して「自転車=自ら転がる車輪」ではないということを、いやというほど感じていたからである。自らの力で一生懸命こがなければ前へ進まない。特に坂道になれば、とんでもなく力強くこがなければ上れない。間違っても自ら転がることはない。転がるときは下り坂の時である。上らなければ下ることもないのである。したがって、まず上るということありきである。そのためには、自ら力強くこがなければならない。これを漢字にしたのが、この「自力車」である。「自ら」+「力強くこぐ」+「車輪」という意味である。中国、日本系列ではなく、台湾系列に属する漢字を作ってみた。発音は、ズー・リー・チョウ(zi  li  che )(声調記号は省く)となる。自らの力に応じた速度しか出ないし、自らの力に応じた距離しか走れない。それがこの「自力車」である。そして、これを通していろいろと表現してみたい。「自力車」これをこのコーナーのタイトルとする。