その37

<37-1>キャッシュレス覇権戦争(岩田昭男)
 
キャッシュレス化には利便性だけではなく、さまざまなリスクが伴う。自分の資産や日々の経済行動を、国家や一企業にすべて把握されてしまうというデータ監視の問題。そしてそれらのデータに基づき、AIが人を格付けする「信用格差社会」が到来するかもしれないという危惧。
 
<37-2>脳には妙なクセがある(池谷裕二)
 
生後2日~5日という新生児の脳を調べたところ、すでに母国語と外国語を聞いたときで左脳の反応が違うのです。やはり、生まれる前にお母さんのおなかのなかでずっと母国語を聞いてきたと考えるのが自然な気がします。
 
<37-3>デジタル食品の恐怖(高橋五郎)
 
アメリカの大豆とトウモロコシは、市販が許可されている遺伝子組み換え作物である。小麦はまだ市販許可が下りていない。アメリカ農務省の遺伝子組み換え作物の作付面積データ(2015年)によると、大豆の94%、トウモロコシの92%が遺伝子組み換えによって生産されている。アメリカ以外の穀物の日本の輸入先であるカナダ、オーストラリア、ブラジルもアメリカ同様に遺伝子組み換え作物の作付面積が多い国である。2014年時点で、世界では2億ヘクタールの土地で遺伝子組み換え作物が栽培されている。耕作面積14億ヘクタールの14%にも達する。
 
<37-4>ひとりぼっちを笑うな(蛭子能収)
 
「好き」の反対は「嫌い」ではなく「無関心」だって言うじゃないですか。(マザーテレサの発言)
 
<37-5>50歳からの「死に方」(弘兼憲史)
 
何かを諦めることは、始めることより大変だと思います。
 
<37-6>世界から格差がなくならない本当の理由(池上彰)
 
未来の日本のために私が最も大切だと思うのが、子どもの教育格差の改善です。2016年9月に発表されたOECD(経済協力開発機構)に加盟する先進国33か国の「教育機関への公的支出の割合」を表したグラフがあります。日本は下から2番目。しかも、その前年の発表までは6年連続で最下位だったのです。
 
<37-7>はじめての不倫学(坂爪真吾)
 
「20世紀最高の経営者」と呼ばれたGE(ゼネラル・エレクトリック)のジャック・ウェルチも、不倫だけはうまくマネジメントできなかった。アメリカのクリントン元大統領しかり。世界最高の経営者や権力者でもコントロールできない領域を、我々凡人がコントロールできるはずがない。
 
<37-8>外科医の腕は何で決まるのか(羽鳥隆)
 
画像検査は、機械の性能が高いか低いかで、がんを発見できる確率が大きく変わります。あまり積極的に設備投資していない医療設備だと、鮮明な画像を見ることができないこともあります。
 
<37-9>薬が人を殺している(内海聡)
 
日本の電化製品で最も危険だといわれているのがIHクッキングヒーターです。機械にもよりますがIHクッキングヒーターは1000mG近くの電磁波を出します。ろくに働いていない厚生労働省であっても、IHクッキングヒーターの妊婦使用に対してだけは注意喚起をしています。
 
<37-10>「忙しい」を捨てる(アルボムッレ・スマナサーラ)
 
いつもやっている作業を一旦中断して、別なことをすることによって、退化のスピードを遅くする。それが、「休み」ということの本質なのです。ここを、皆勘違いしていて、仕事で身体が疲れているから、休日というものがあるのだと思っています。でも、それは誤解です。日常の仕事のルーティンワーク、ワンパターンから脱するために、私たちは「休日」というものを創造したのです。
 
<37-11>フード左翼とフード右翼(速水健朗)
 
遺伝子組み換えの研究には費用がかかり、種子ビジネスは、中小が参入できず、巨大企業が寡占する市場になってしまっているのだ。遺伝子組み替えの関連企業は、合併吸収の繰り返しの末、モンサント、デュポン・パイオニア、シンジェンタ、バイエル、BASFの5社による独占状態となっている。農業がこうした一部の大企業に支配されることは、食の安全の部分だけでなく、市場競争の原理の上でも健全ではない。
 
<37-12>日本の手術はなぜ世界一なのか(宇山一朗)
 
いま、日本の消化器系の外科医で、胃がんの手術ができない人はおそらく存在しない。それはよくもあり悪くもある。日本全国どこでも手術を受けられるというメリットがある一方で、技術が高くない人でも執刀できるというデメリットになるのだ。
 
<37-13>TPP黒い条約(中野剛志・編)
 
物品の関税交渉などTPPのごく一側面に過ぎない。むしろ日本に構造改革路線を復活させ、米国が固執する「非関税障壁」の撤廃を迫り続けることこそ、米国が日本にTPP参加の圧力をかけ続けてきた真意なのである。自民党もそのことは正確に認識していたはずだ。2012年12月の衆議院総選挙の際、自民党が公表した政権公約「J-ファイル2012」では、TPPに関し次の6条件が掲げられている。1.政府が、「聖域なき関税撤廃」を前提にする限り、交渉参加に反対する。2.自由貿易の理念に反する自動車等の工業製品の数値目標は受け入れない。3.国民皆保険制度を守る。4.食の安全安心の基準を守る。5.国の主権を損なうようなISD条項は合意しない。6.政府調達・金融サービス等は、わが国の特性を踏まえる。 関税にかかわるものは最初の1項目だけで、6条件のうち5条件が非関税障壁にかかわるものだ。そのどれもが日本に規制緩和や構造改革を迫るものであり、国民生活や国家主権にもかかわる重大な内容を含んでいる。自民党の公約は、TPPの本質を見極め、要諦を網羅し、的を得たものであると評価できる。「日米構造協議」が、日本に構造改革を迫ることで、日本に存在する(と米国が主張する)非関税障壁の撤廃をもくろむものであったことは再三触れた。日米交渉の歴史を踏まえれば、「日米構造協議」の延長線上に位置づけられるべきTPPの主戦場は、関税分野よりむしろ非関税分野にあるといっても過言ではない。
 
<37-14>東大病院を辞めたから言える「がん」の話(大場大)
 
米国臨床腫瘍学会という世界中のがん治療エキスパートたちが集結する世界的な学会において、2015年に盛んにテーマとされていたのが「バリュー:価値」という概念でした。これまでは、治療薬を評価する際に、その「利益(ベネフィット)」である有効性と、「不利益(リスク)」である副作用ばかりに関心がもたれていました。しかし、今後はこれにコスト(治療費)という要素も加味した、バリューという総合評価を重視していこうとする流れが注目されています。つまり、治療の「費用対効果」と言い換えることができるでしょう。
 
<37-15>京都嫌い(井上章一)
 
「金銀苔石」という言葉を、私はしばしば耳にする。写真の掲載にさいし、いちばんコストのかかる人気四大寺(金閣寺、銀閣寺、西芳寺、龍安寺)を総称する言いまわしである。このクラスになれば、1枚の写真利用が20万円以上になることもあると、噂されている。
 
<37-16>最新!腸内細菌を味方に付ける30の方法(藤田紘一郎)
 
近い将来、もしかしたら究極のダイエットとして「便移植」が注目されるかもしれません。「どんなことをしてでもやせたい!」という人たちの腸に、やせている人の大便を移植する、という方法です。
 
<37-17>大国の掟(佐藤優)
 
イスラム教の世界では、売買春は死刑にあたる重罪です。しかも死刑方法は「石打ち」です。大きい石だと一発で死んでしまいますから、野球の硬球ぐらいの大きさの処刑用の石を集めてくる。それをみんなで投げる。そして受刑者はぼろぼろになって死んでしまう。ところが、ロンドンのエスコートクラブなどに行くと、アラビア語表記があります。客はサウジアラビアの人が多いわけです。これはじつは「結婚あっせん所」です。イスラム教の場合は、結婚するときに必ず離婚の条件について取り決めて契約しないといけません。だから、たとえば、名門の女性の親は娘を離婚させたくないときは、離婚の条件として支払いが不可能なくらい高い慰謝料の契約をしておきます。ロンドンにある「結婚あっせん所」は、聖職者が経営しています。写真を見せて「この娘は結婚時間2時間、慰謝料は3万円」という説明がある。これを「時間結婚」といいます。イスラム教では4人まで結婚できますから、金持ちは3人と結婚して、4人目はあけておいて、この「あっせん所」で時間結婚するという仕組みです。600回結婚したとか、700回結婚したという人がたくさんいるわけです。
 
<37-18>食べる力(塩田芳享)
 
老年症候群というものをご存じだろうか。高齢になると高頻度で起こる症状の総称である。認知症・めまい・転倒・骨粗鬆症など高齢者特有の症状である。このような老齢症候群が急増するのが、超高齢社会なのである。そして、その中でも最も怖い病がある。それが、「嚥下障害」である。
 
<37-19>がん治療革命の衝撃(NHKスペシャル取材班)
 
免疫細胞は私たちの体内に生まれたがん細胞も攻撃してくれる。ところが、がん細胞は免疫細胞から攻撃を受け続けると、次第にその攻撃から逃れる仕組みを備えていく。もともと免疫細胞は、敵への攻撃を止める「ブレーキボタン」のような機能をもっている。これは、免疫細胞が暴走したり、自分の体を攻撃したりしないようにするためだと考えられている。実は、免疫細胞の攻撃を受けても生き残ったがん細胞は、この免疫細胞のブレーキボタンを押すことができるのだ。すると免疫細胞はがん細胞への攻撃を止めてしまう。つまり、がん細胞は免疫細胞を無力化することでどんどん増殖し、その結果、がんが進行するのである。
 
<37-20>シャーデンフロイデ(中野信子)
 
有名なルネ・スピッツによる実験からわかったことですが、抱きしめる、撫でる、やさしく触れる、言葉を掛けるなど、愛情に基づく養育行動による刺激を完全に剥奪されて育てられた場合、ヒトでは半数以上の子どもが、成人を迎える前に亡くなります。ヒトは愛情という得体のしれないものを糧に生長します。