イチゴの厚化粧

 イチゴを毎年100株程度プランターで栽培している。4月になり白いかわいい花がさくと、あとには緑色の小さな実ができる。それが徐々に大きくなり、緑色から白色に変わってくる。5月初旬ごろからは次々と色付き、毎日収穫することになる。完熟を目指して収穫するので、「まだまだ」「もう少し」「うーん、どうしようか?」、を繰り返しながらの収穫となる。それほど強く意識しなかったのであるが、毎日収穫するということは、1日で確実に色付いているのである。1日といってもかなり幅がある。ある日、駐車場から車を出そうと車庫をあけたところ、その近くに置いていたプランターのイチゴがうっすらとピンク色になっていた。今年は色付く時期がちょっと早めかなと思って出かけた。買い物から帰って来て、車庫へ車を入れようとしたとき、別物かと思えるくらいイチゴの色が変わっていた。

 イチゴが色付くのは時間なのか、温度や天気に左右されるのか? いろいろと疑問が出てくる。そこで、色付き始めたイチゴを特定し、時間ごとに写真を撮って調べてみた。ある日の天気は曇り、朝はちょっと寒かったが、時間とともに気温が上がってきた。朝から夕方まで適度に時間を空けながら観察を続けた。

5月4日

  ・9時   うっすらとピンク色になった実を発見

        

  ・12時  うっすらとしたピンクが広がってきた

        

  ・16時  全体的にうっすらとしたピンク色になる

        

  ・18時  全体的にさらに色が濃くなる

        

5月5日

  ・9時   ほぼ全体が赤く色付く

        

  ・15時  収穫可能な色合いになる

        

        

5月6日

  ・9時   前日と変わらず

         収穫

         

        

 この日は曇りで、これ以上色が濃くなることはなかった。日光の強い日であれば、さらに色が濃くなり、うっすらと黒味を帯びてくる。

 イチゴは日に当たる上部が真っ赤になっても、裏側はまだ色が薄いというものが多い。これは日光の光によるものなのか、日光に当たったために表面温度が上がったためなのかはよくわからない。色付き始めたイチゴの大きさは変わることはなかった。同じ大きさのままで、一気に色付く。そして、その色付くときに、甘みが増すと同時にやわらかくなってくる。わずか2日間で収穫可能な色と味になるのである。いろいろな野菜や果物を栽培しているが、こんなに短時間で完熟するものは珍しい。アスパラやキュウリが一気に成長するのはよく知られている。雨が続いて2日間収穫が遅れると、食べごろの大きさを逃してしまうくらい成長が早い。アスパラは1日で8cm、キュウリは一回り大きくなる。それでもそれらは大きさであり、色や味ではない。

 イチゴはうっすらとピンク色になってから、真っ赤になるまでが早い。白色の実は硬く、シャリシャリして酸味が強く渋味も若干ある(※1)。それがわずか2日間でこれだけの変化を起こす。自然の力には驚かされる。冬の間にじっくりと蓄えたパワーを一気に放出したような力強さを感じる。敷き藁の茶色と葉の緑色だけが目立つプランターが一気に華やかになる。イチゴ栽培で最高に感動する瞬間である。

※1:糖度6で、アスパラの糖度8よりも甘さが少ない。