ヒョウタンアート(ワイングラス)

 ヒョウタンの特性を生かした作品作りが楽しい。今回はワイングラスである。大小様々なヒョウタンをじっくりと眺め、どこをどう利用するかを検討する。この場合、ヒョウタンとして完璧な形をしたものは使いにくいということに気が付いた。つるにつながった部分がきれいなラインを描いているものは非常に使いにくい。ずんぐりとした口のものの方が使い勝手がいい。その代表がワイングラスである。グラスの底が美しいすぼみを見せるのである。ヒョウタンを見ていて思うのは上下がきれいな形状をしている物はほとんどないということである。ぱっと見にはきれいな形であるが、じっくり見るとかなりいびつな形をしている。それがまたいい味を出しているのかもしれない。

 まず、ワイングラスの本体の大きさを決める。それに合うように台座の大きさを選ぶ。これらをつなぐのは、もちろんヒョウタンではできない。竹製の割りばしである。バランスのいい長さに切り、両者を接着する。驚くのはその軽さである。恐ろしいほどの軽さである。漆での塗装を施す前の重さは15gである。卵の三分の一の重さである。口の部分の厚みは1mm。この薄さが口当たりの良さを感じさせる。これが美味さにつながる。安いワインでも、一気に高級ワインに変化させてしまう・・・、かと思われたが、やはり安い味しかしなかった。これは納得するしかない。

 このワイングラスの色についてはかなり悩んだ。ワインの色をはっきりと見極めるために内側は白。これはすぐに結論が出た。問題は外側である。赤ワインの色に最も衝撃的な色を検討した。そして落ち着いたのが黒である。黒漆をしっかりと塗り重ね、それを磨き上げてつやを出している。軽さとは正反対に、重厚感漂うワイングラスの完成である。とてもヒョウタンでできているとは思えない満足感がある