51.ビール

 「とりあえずビール」ではなく、「とにかくビール」である。和食、洋食、中華、エスニック、どんな料理にもよく合う。夏でも冬でもビール。これほど素晴らしい飲み物も少ない。素晴らしいにもランクがある。健康で普通に生活をしていて夕食時に飲むビールをレベル1とする。夏の真昼間に飲むビールはレベル2である。風呂上りあたりがレベル3である。では、最高にうまいビールの飲み方はとなると、ちょっと考え込んでしまう。今までの経験を振り返ってみる。確かにつまみのうまいときは最高である。鍋もいい。新鮮な刺身もいい。しかし、これらは主に口の中でのうまさである。のど越しのうまさというものがある。これは口の中でのものに比べると、2ランクぐらい上である。のどが渇いているときのビールがこれにあたる。夏の暑さでしっかりと汗をかいた後などはビールがうまい。このあたりになるとレベル5程度まで上がる。最高にうまいビールというのは、飲んだ直後に、全身にビールの泡が流れていくのがわかるくらい染み渡っていくのを感じられるときである。では、この状態をどのようにして作るのか。もっとも簡単なのは、適度な運動を1時間程度続け、しっかりと汗を流す。その後、さらにサウナで汗を絞り出す。このようにして、1kg程度体重が減るとベストである。このくらいになると、のどの渇きは十分過ぎるほど自覚できる。しっかりと1kg分の水分を出しているので、1kg分の水分補給が必要となる。この水分をビールで置き換えるのである。つまり、1リットルである。このような考え方をすることで罪悪感が薄れる。これを考えただけでも、レベル3ぐらいは跳ね上がってしまう。同じ運動でも、過激なものは駄目である。瞬発力を要する筋トレや短距離走はだめである。これらは心地よい疲労感が得られないばかりか気分が悪くなる。レベルがゼロ、ひどいときはマイナスにまで下がってしまう。あくまでも適度な運動が良い。健康的なことをしたということで、罪悪感を薄れさせることが重要である。そして、できれば季節は暑い夏がベストである。このようにして、旨いビールを飲むための準備を着実に、かつ抜かりなく行うことで気分を盛り上げていく。もちろん、ビールもグラスもキンキンに冷やしておく。最初の一杯は、やや炭酸を強くして喉に適度な刺激を与えてやる。このときの喉越しがたまらなくいい。ゴク、ゴク、ではなくゴクゴク、ゴクゴクぐらい、一気にいくことが大事である。この後に、「プッ、ファー」と上唇に着いた泡を吹き飛ばす。2、3度大きく深呼吸をし、おもむろにつまみを口にする。ここからはつまみとビールのコンビネーションを楽しむことになる。ビールは量を加減しながら飲まなければいけない。どうしても、つまみ1に対してビールが2くらいになってしまう。そうすると、すぐに満腹になり美味しいつまみが味わえなくなってしまう。あくまでもビールに求める旨さは、最初の「ゴクゴク、ゴクゴク」にとどめておく必要がある。

 こうすることで、肉体的にも精神的にも満足のいく、美味しいビールを飲むことができるのである。ここで止めておけば、心身ともに大満足なのであるが、どうしてもその先へ歩を進めてしまう。精神的なものなのか、肉体的なものが原因なのかはわからないが、それを深く追求しないところにさらなる旨味を発見するのである。