64.大人のおもちゃ

 「大人のおもちゃ」と聞いて何を想像するだろうか? 清く、正しく、美しく、健全なホームページを目指すものとしては、ちょっと気が引けるテーマである。期待に胸を膨らませた方には、申し訳ありませんが期待を裏切ります。そうでない方は、引き続き安心してお読みいただけます。

 どう見ても大人のおもちゃにしか見えないので、それをテーマにしてみた。かつてよく行っていたスポーツクラブでの光景である。そこのパウダールームには、ドライヤーが5台設置してある。壁には、「ドライヤーは髪の毛の乾燥のみにご使用ください」と書かれた貼り紙がしてある。普通に読めば、「ごく当たり前のことを、なぜそれをわざわざ貼り紙に書かなければならないのか?」という疑問が出て当然である。しかし、毎日通ってそれらを使っている人々を見ていると、貼らなければならない理由がよく理解できる。

 風呂やサウナから出てきた人が、このドライヤーを正規の使い方以外で使うからである。具体的な使い方を見てみると、「下の毛を乾かす」「足の指に塗った水虫薬を乾かす」「扇風機代わりに使う(夏は冷風、冬は温風)」「タオルを乾かす」「頭皮を乾かす」等、見るに見かねるような使い方をしている。特に夏場、汗でぬれたTシャツを乾かされてはたまったものではない。時間がかかるため、室温が数度上がっているのではないかと思われるくらい暑くなる。頭皮を乾かすというのはちょっとわかりにくいかもしれない。詳しく説明すると、バーコードのようになって、ほとんどない髪の毛をドライヤーで乾かしているのである。髪の毛はもうとっくに乾いているにもかかわらず、これでもかといわんばかりに熱風を送り続けているのである。すでに頭皮は真っ赤なっているのにやめる気配がない。意地なのか、それとも見栄か? ようやく終わったかと思うと、おもむろに髪の毛をセットし始める。絶対にセットできない毛量であるにもかかわらずそれを行う。この痛々しい行為は、「貼り紙」の内容からして、ぎりぎりセーフとしても、他の行為は完全にアウトである。

 これだけ豊富な使い道のあるドライヤーを、髪の毛を乾燥させるためだけの用途に使うのはもったいないように思う。もっと多くの機能を付加し、多用途ドライヤーをつくればもっと売れると思われる。子供が水鉄砲で遊ぶように、大人はドライヤーで遊ぶのである。水でも空気でもいい、とにかく何かが出ていることに興味を持つのだろう。興味ではなく好きなのである。興味であれば、理由や原因が解明された時点でやめるが、やめる気配は一向にない。これは明らかに好きなのである。楽しいのである。ぜひ、電機メーカーに多機能ドライヤーの製作をお考えいただければありがたいと思う、と同時に売り上げの3%程度のアイデア料をいただければ何よりです。ヒット商品になること間違いなしである。その時は、商品名を「大人のおもちゃ」とすることを忘れないでいただきたい。