猛暑(2020年)

 予定稿を急きょ変更して、緊急出稿である。

 2020年の夏は恐ろしいくらい暑くなった。暑いといっても、人間はクーラーを使用して部屋を涼しくしていれば、それほど猛暑の影響を受けることはない。しかし、自然界はそういうわけにはいかない。クーラーを使用することはできない。植物は自力で乗り切るしかない。その自力にはそれぞれの持つ限界がある。今年の夏、それらの限界を知ることとなった。

 連日35℃を上回る日が続いた。おまけに夜は熱帯夜である。明けても暮れても暑さから逃れることができない。雨が降らないので道端の雑草が枯れている。過酷な自然環境に強い雑草が枯れてしまうのである。天気予報で報じられる気温は、風通しがよく直射日光が当たらないところで測定されている。直射日光の当たる場所ではさらに高温となる。薄いスモークの入ったアクリル屋根でおおわれた駐車場に設置した作業台では、50℃まで測定できる温度計が振り切れた。直射日光が当たれば、恐ろしいくらいの高温になることは想像に難くない。

 暑さが植物にどのような影響を与えたか? どのような植物が影響を受けたのか? 今年は「壮大なる実験」(菜園日記参照)のため、ほとんど野菜を栽培していなかったが、空きスペースや常設の場所で数種類の野菜や果実を栽培していた。それらが受けた影響について書いてみたい。

 ブルーベリー:猛暑前に収穫が終わっていたので実害はなかった。ただし、ブルーベリーの欠点である乾燥に対する弱さが出た。連日の散水で枯れるのを防いだが、手後れで葉の一部が枯れる被害が出た。

 ミニトマト:花は今まで通り咲くのであるが、まったく実を付けなくなってしまった。それまでに付いていた実は熟せず青いままである。木に生気を感じない。おそらく根は瀕死の状態であると思われる。葉は白っぽく変色し生気がない。枝を選定して、新たに脇芽が生えるように促したが、全く効果はなかった。そのまま撤収しようと思ったが、ミニトマトの底力を信じて、もうしばらく(涼しくなるまで)待つことにした。

 スイカ:突然葉が萎れだし、つるが枯れてしまうものが出た。つるが元気でも、雌花がほとんどつかず、雄花ばかりが咲いているものもある。受粉しても成長せず、萎れてしまうものが多かった。運良く育っても、実はソフトボールくらいの大きさで成長が止まってしまった。

 ブドウ:葉がほとんど落ちてしまい、秋の訪れを思わせるような姿になってしまった。毎年ブドウ棚の下で、蚊取り線香を焚いて読書をしていたが、今年は直射日光が強くてできない。葉がなくなれば、当たり前のことだがたくさんついているブドウの実は熟することができない。未熟な実が紙袋とネット(鳥対策)に包まれて木からぶら下がっている。なんともむなしく寂しい光景である。毎年、ヒヨドリやカラスと闘ってきたが、今年に限りその心配はない。鳥たちはそのことをよく知っているのか、今年はブドウを包んだネットを攻撃してこない。うれしいようながっかりしたような複雑な気分にさせてくれる。

 イチゴ:7月に取り分けた苗の葉がどんどん枯れていき、生死の境をさまよっている状態である。8月末には3割程度の苗が枯れてしまった。暑さ対策で苗の上部と横側に遮光ネットを掛けたのであるが、ほとんど効果を発揮しない。直射日光だけでなく気温そのものが暑すぎるのであろう。それと同時に、風(熱風)も影響したのであろうと思われる。

 イチジク:葉が枯れてたくさん落下しているが、付けた実は確実に熟させようと努力しているのがよくわかる。毎日完熟した実を提供してくれた。見た目にはそれほど実害が生じているようには見えない。さすがに原産地がアラビア半島南部ということもあり、暑さには強いのだろう(アフリカが原産地のスイカは予想に反したが・・・)。甘く完熟した実は人間だけでなく鳥にも魅力があるのだろう。それらの攻撃から守るためにネットでしっかりと防御した。これで完璧かと思われたが、まだ敵はいた。アリである。菜園の片隅の巣から延々と列を作りやってくる。木に登り完熟した実を見つけると、お尻の部分に空いた穴から中へ入り食い荒らす。びっくりするくらい多くのアリが取り囲んでいる。酢と焼酎を混ぜたものを木に吹き付けて防御である。

 結局、わが菜園内でもっとも猛暑に強かったのはアリであった。あの真っ黒な体で炎天下に行列を作り行進してもへこたれないのである。なぜ??? ひょっとすると、彼らは働きアリ特有の強い責任感と並外れた気合だけで歩いているのかもしれない。「アリとキリギリス」という物語が思い出された。そうだ! アリに「熱中症になるから、ちょっとはキリギリスを見習えば?」「アリとキリギリスは人間の都合でつくった物語だから、もっと楽をしてもいいんだよ!」と話しかけてみようと思うが、恥ずかしくて声に出せない。

<乾燥に弱いブルーベリー>

 

<花が咲けど実は付かず>

 

<葉がカッサカサ>

 

<雄花ばかりが咲き、雌花はわずかのみ>

 

<ソフトボール大で間もなく収穫を迎える>

 

<葉がなくなりきれいな青空が見える>

 

<これでは鳥も食べない>

 

<新芽の出る気配なし>

 

<遮光ネットも効果なし>

 

<多くの葉が落ちている>

 

<アリの集中攻撃に耐えるイチジク>