5.くしゃみ

 普段何気なくしているくしゃみであるが、じっくり考えてみるとなかなか問題の多い行為である。自分がくしゃみをするときは、できるだけ大きな声(音?)をだして「はーーくしょん」とやる。これは非常に気持ちがいい。2、3回続くとさらに気持ちがいい。しかし、電車の中などで、他人がわざとらしく大きな声でくしゃみをすると、殴りたくなるぐらい腹が立つ。もう少し周りの状況を考えろと言いたくなる。これに対して、女性に多く見られるのであるが、「へくちぃっ」というような、よく聞いていなければくしゃみなのかどうかもわからないようなものもある。非常に好感が持てるのだが、どうもすっきりしない。気を使っているのはよくわかるが、そんなくしゃみの仕方では本人もすっきりしないだろうと心配してしまう。

 くしゃみの定義は「不随意に起こる、口や鼻からの空気の激しい放出」となっている。かぜのウイルスや、ホコリ、花粉、などの有害な物質が空気と一緒に鼻から入ってきて鼻腔の粘膜にはりつくと、その刺激が三叉神経に伝わる。すると、横隔膜やろっ間筋などの呼吸に使われる筋肉に伝わり緊張させる。その緊張がピークになったとき、呼吸筋は一気に緊張が緩み、肺の中の空気が勢いよく放出される」となっている。このようにくしゃみは、体にとって有害な物質を体内から外へ追い出そうとする防衛本能なのである。しかし、太陽を見て出るくしゃみは、どういう理由なのかしらべてみたが、原因不明らしい。くしゃみで吐き出す空気の速度は秒速100mで10mぐらい先まで届くといわれている。やはりくしゃみをするときは、手やハンカチで口を押さえるのが礼儀である。ただし、いくら礼儀とはいえ、状況判断というものが必要である。電車の座席に座っていて、くしゃみをする場合は特に注意が必要である。前に人がいないにもかかわらず、手で口を押え、「はくしょん」とやった場合、横に座っている人はたまったものではない。前へ飛ぶべき空気がすべて両サイドへ飛ぶからである。わざわざ人のいる方向へ向けるなよ、と言いたくなる。

 外国ではくしゃみをした人に「Bless you(神の祝福あれ)」と言うらしい。人間の体の中にはdevilがいて、このdevilがイライラしているとくしゃみが出るので、悪くならないようにそう言うらしい。しかし、大きな声でくしゃみをすることを嫌うところもある。ではどうするのか。前出の「へくちぃっ」というやつである。これをマスターしなければいけないことになる。理屈は簡単である。「はー、はー、はー」、とくしゃみの前兆が来たところで、息を吐ききってしまえばよい。そうすれば肝心の「はくしょん」のときに出す息がないので、おのずと「へくちぃっ」になる。しかし、これはどう考えてもすっきりしない。口をタオルで押さえてでも、「はくしょん」とやりたい。

 くしゃみで最も難度が高いのは、クロール(水泳)中のくしゃみである。何が難しいかというと、「はー、はー、はー、はくしょん」の最初の部分である。この「はー、はー、はー」で、「はー」の部分は水中で息を吐き、次の「はー」までに顔を横向けて、息を一気に吸わなければならない。したがって、この「はー」の間隔が適度な長さでないと、ものすごい速さで泳がなければならなくなり、失敗に終わるのである。これさえ合わせられれば、あとは水の中で、「はくしょん」と息を吐けばよいだけである。今まで25年間水泳をしているが、これが完全に成功したのは、いまだに2回だけである。あとは全て不完全燃焼となる不発である。生きている間にもう一度成功させたいものである。