21.断念

 ヒルクライムを始めて5年目に入った。大会としては、乗鞍:1回、富士山:3回の計4回のヒルクライムを経験した。年齢的にはそろそろ引退時期かな? と思うことが多くなった。しかし、何事もそうであるが明確な理由というものが欲しい。そうでなければ何かすっきりとしない。理由もなくやめるというのは性格的に合わない。「きつい」「疲れた」「つらい」は基本的に理由にしたくない。もともとそれを承知で始めたスポーツである。

 2020年の富士山ヒルクライムに向けて、日々練習と減量を繰り返していた。エアロバイクばかりでなく、ランニングマシンも使用しながら練習メニューをこなしていた。去年の9月、ランニングマシンでウォーキングからランに切り替えた瞬間に、左の膝が「グシャッ」という音を立てた(音が聞こえたような気がした)。ほんの一瞬のことである。たったこれだけのことで、左足で体重を支えることができなくなった。日曜日ということもあり、病院へは翌日行くことにした。やや痛みが引き、軽くなら地に足を着けることができるようになったが、膝を曲げることができない。ことの重大さを考慮し、町医者ではなく市立病院へ行くことにした。予約がないため数時間待たされ、レントゲンを撮り、診察を受けて家へ帰ったのは夕方であった。レントゲンを見る限り骨には全く異常は見られなかった。それではということでMRIを撮ることになった。なんと予約がぎっしりと入っており、3週間後ということになった。そしてその担当医は週に2日だけ出勤しているので、MRIの結果を聞けるのはさらに4日後である。医療制度の在り方に大疑問であるが・・・? そのころには痛みは残っているが、ほとんど正常に近い歩き方ができるようになっていた。

 MRIの画像を見ながら説明を聞く。どうやら左足内側の半月板が損傷しているようである。ここはかつてケガをしたところで、毎年数度は痛みを発するところである。時には膝を曲げての作業や正座で痛みが出ることがあった。それでもしばらくすると、何事もなかったかのように痛みが引くので、それほど気にもしていなかった。今回もそのような前兆が数日前から出ていたのであるが、気にもせずランニングマシンを使っていた。ランに変わって最初の一歩であることからしても、相当に傷んでいたのであろうと思われる。もし、ランニングマシンを使っていなくても、他の状況で同じように発症していたと思われる。

 医者の判断としては、数か月様子を見て、それでも痛みが取れなければ手術ということも考えなければならないだろう、ということであった。判断をするのは本人であるから、痛みを抱えたまま生活するもよし、手術をするのもよしということである。ただ、この病院では膝の手術の専門家がいないので大学病院を紹介するということであった。ことが大きいだけにセカンドオピニオンを求めることにした。レントゲン写真とMRIの画像をCD-Rに焼いてもらい他医院へ行った。しかし、そこでも同じように半月板損傷に対する解決策は得られなかった。

 発症から1か月が経過したころ、痛みを抱えながらでも、どうにか通常に近い歩行ができるので運動を再開した。しかし、半月板に負荷をかけるランニングは怖くてできない。エアロバイクは思ったほど膝に負担をかけないので軽い負荷で始めた。このような状況で最もいいのは水泳である。早速スポーツクラブを変更して水泳を始めた。水泳はヒルクライムを始めるまで15年近くやっていたので全く抵抗なく再開することができた。

 以上のような経緯で、ヒルクライムを断念する理由ができた。本来ならこれで「めでたし、めでたし」となるのであるが現実はそうではない。ヒルクライム中は完走やタイムの短縮のために減量をしていた。しかし、今後は「出っ張った腹」や「みっともないぶよぶよの体」になれば、それを直接人目にさらすことになる。これは絶対に避けなければならない。今まで以上の減量を強いられることになる。うん??? ちょっと待てよ!プールサイドでは思いっきり腹をへこませ、大急ぎでプールへ入れば気付かれなくて済むのでは? 上がるときも同様にすればいいのかも・・・? 名案である!