37.本(その4)

 近所でハーフマラソン大会が開催された。マラソンには興味があるのだが、やってみようという気は起きない。自転車は大丈夫なのであるが、マラソンだと膝が耐えきれないような気がするのがその理由である。性格的には、やり始めるとおそらくそこそこの結果が出るまでやることになるので、相当な覚悟が必要になると思っている。市民ランナーの最高峰にいる人たちがよく口にする言葉に「サブスリー」というのがある。フルマラソンを3時間未満で走り切ることを意味する。数千人規模の市民マラソン大会では、3~5%の人がそれに該当する。この数字を見てもわかるように、ごく限られた人しか達成できないのである。単純に時速を計算すると、14km/時ということになる。スポーツクラブのランニングマシンで、時速10kmで1時間というのは経験したことがある。これでも相当にきつい。フルマラソンを完走するには、この速度でさらにあと3時間以上走らなければならない。ましてや、サブスリーなどはとても無理というものである。最初から戦意喪失である。

 話をがらりと変えて、読書についてである。読書に関して、マラソンの「サブスリー」的なものは存在するのだろうか? 若者の読書離れというのはよく耳にするが、実態はどうなのだろうか? 世間の人はどの程度本を読んでいるのだろうか? これについては、市民マラソンのような、読書大会といった企画もなければ、車内で本を読んでいる人が、これが今年XX冊目という表示をしているわけでもない。そんなこんなで、今回は読書量の基準を作ってみたくなった。

 基準を作るためには、データが必要である。そこで使用したのが、やや古い数字ではあるが、2009年に 財)出版文化産業振興財団が報道機関向けに出した「現代人の読書実態調査」を参考にした。これは、全国の中高生1239人、成人1550人を対象として行われたものである。これによると、男・女、年代別共に月に8冊以上の本を読んでいる人の割合は、上位4~5%となっていた。偶然にもマラソンのサブスリーランナーの数字とよく似ている。ただ、本の内容については触れられていなかった。漫画、週刊誌は含まれていないだろうとは思われるが・・・。同時に「読んだ」が基準で、「理解度」は自己申告である。この数字を年間にすると96冊ということになる。ざっと年間100冊である。これだけの読書量があれば、市民マラソンのサブスリー並みということになる。これに倣って名付けるとすると「オーヴァー・ハンドレッド」とでもいえばいいのだろうか。十分に自慢の材料として使える。読書もマラソンと同じで、継続しなければ意味がない。そこで、さらに新たなステイタスを設定したい。今大流行の将棋を参考にした、「永世」の称号である。7年連続、または通算10回「オーヴァー・ハンドレッド」達成で「永世読書家」としたい。しかし、これらにはマラソンや将棋と決定的に違うところがある。タイムや勝敗といった客観的な基準がないということである。あくまでも自己申告で、「読んだ」が基準である。自己を満足させるための手段ということを忘れてはいけない。人前で言えるだけの知識がないとバカにされかねない、という非常に恐ろしい基準ということもできる。使用するときは十分に気を付けてもらいたい。この件に関する責任は一切負いかねる。あくまでも自己責任でお願いしたい。