ドライフラワー

 創作活動を主体としているのでアトリエの中は殺風景である。これではいいアイデアが浮かばないのもしょうがない、と半ばあきらめ気味であった。何とかこのあきらめムードを打破しようと、一念発起して案をいろいろと考えた。

 アトリエの入り口には、菜園内で咲いている季節の花を飾っている。生花は日持ちが悪くすぐにぐったりとしてしまう。特に入り口は東側に面しており、朝日がたっぷりと当たる。夏などは日中まで持たないときがある。これでは花もかわいそうである。何とか日持ちをさせるいい方法はないものかと・・・。しばらくこのような日々が続いたある日、テレビでドライフラワーを作っている映像を見た。花のミイラである。しかし、人間のそれとは違って、咲いていた時のままの色を保っている。何か明るくなるような飾り付けを、ということで思案を巡らせていたので、ぴったりとあてはまった。これは素晴らしい、と思いさっそく作業に取り掛かった。

 身の回りに咲いている花のうちで、色に明るさのあるものを数種類選んだ。あとはこれらから水分を抜けばいい。準備するものは、焼酎の空きパックとシリカゲルである。空きパックに逆さにした花を入れ、シリカゲルを隙間なく転がしこんでいく。空きパックにぎっしりと詰め込んだら完成。このまま放置すればいいのであるが、シリカゲルが空気中の水分を吸収してはだいなしである。ビニールの袋でカバーをして部屋の片隅に放置。さて、いつまで放置すればいいのだろう。この部分が不明である。何度も確認したのでは花弁が落ちる可能性がある。早すぎると乾燥不足の可能性があるが、遅い分には何の問題も生じないだろう。ということで、1ヵ月程度放置したある日、花たちを取り出してみた。見事にすべての花がきれいに発色したままミイラになっていた。しかし、かぼそい花たちの花弁は、とてもアトリエの入り口で風雨に打ち勝てる状態ではない。急遽目的を変更し、室内で鑑賞することとなった。

 見た目は非常に美しく心を和ませてくれる。数種類あるので時には違った花に交換して心を和ませている。目は楽しませてくれるのであるが、花の命ともいえる匂いがない。これでは価値が半減である。直接、花にそれらしいにおいの元を振りかけたくはない。我がアトリエには、この役割を十分に果たしてくれるいいものがある。香炉である。これで好みの香りのする香をたけばいい。これで完璧である。

 花を見つめながら、幻想的な匂いの世界へ引き込まれる。これでいいアイデアや創造力が発揮されないわけがない。と、思うのであるが、なかなか現実は厳しいものがある。視覚と嗅覚だけは、適度な刺激を受けてわずかではあるが老化を防げそうな気がする(これはあくまでも個人の感想です)。

<シリカゲルをたっぷりと入れる>

 

<湿気が入らないように!>

 

<完成!!>

 

<最高の香り>