植木瓶

<その1>

 

<その2>

 

<その3>

 

<その4>

 酒を飲み終わると当然のこととして空き瓶がでる。結構な数になる。日本酒や焼酎のような一升瓶では何の創作意欲もわいてこないが、きれいな磁器やガラスの瓶であると、つい細工をしてみたくなる。それほど高級な酒を飲んでいるわけではないが、たまに、ほんのたまに、ちょっといい酒が飲める時がある。ちびりちびりと飲むが、樽ではなく、しょせん小さな瓶である。すぐ空になってしまう。未練がましく置いていても、中身が湧いてくるわけではない。捨てるのも忍びないので利用方法を考える。さてどこをどのように細工するか? じっくりとみていると、瓶が訴えかけてくる。美しい瓶なので、美しい草花がよく似合う。花瓶ならそのままで利用できる。しかし、それではあまりにも芸がない。何か一工夫ほしい。そこで施したのが、底を抜くパターンと、胴を抜くパターンである。磁器は底を抜いて吊り下げ、または台に固定方式とした。シクラメンのような、色のはっきりとした花がよく似合う。透明のガラス瓶は胴に厚みがないので、あまり根を伸ばす植物はよくない。観葉植物がいい。これは中が見えるだけに土にも気を使った。オレンジ色(乾いていると薄い黄色)の鹿沼土を使うことにした。水はけがよく、かつ水持ちがいい。ちょっと不思議な表現であるが、使ってみるとその意味がよくわかる。表面は乾燥防止と見栄えのためミズゴケで覆った。観賞用としても十分に耐えうる。

 わがアトリエ前を通った人が、何か不思議なものを見たような顔をして通り過ぎて行く。よく見るウイスキーの瓶のようであるが、逆さまになっている。聞きたいが、もし間違っていると恥ずかしい、といった感じである。その通り、これは不思議な形をした植木鉢・・・ではなく、“植木瓶”なのである。