ラペルピン

 

 これは錫製のシシトウとタカノツメのラペルピンである。どちらもわが家庭菜園で収穫したもので型を取っている。収穫したものの中から、最もそれらしい形と凹凸をもつものを選んだ。こうやって見ると、かなり本物によく似ている。いや、本物以上に本物らしい。収穫したシシトウとタカノツメを石膏に押し付けて型を取る。しばらく置くと石膏が発熱しながら固まってくる。石膏は固まるときにわずかではあるが収縮する。しかし、これらは柔軟性があるので、まったく影響を受けることがなくきれいな型が取れる。この型を取った石膏を完全に乾かし、そこへ溶かした錫を流し込む。錫は232℃で溶解するので非常に作業がしやすい金属である。溶かすのは簡単であるが流し込むのが難しい。非常に表面張力が強く、このような小さなものに流すには苦労する。溶けた錫が注ぎ口までは簡単にくるのであるが、そこから下へはなかなか落ちない。注ぎ口でどんどん盛り上がるのである。そこからさらに盛り上がり、限界を超えると一気に流れ落ちる。型の中はあっという間にオーバーフローである。余分な錫を削り取るのが一苦労である。最後は、最も現物に近いと思われる色の漆で仕上げである。漆の良さは接着力と光沢にある。そっと食卓に置いておくと本物と間違いそうなくらいよくできている。シシトウとタカノツメのどちらを選択するかは、季節、その日の気分、着るジャケットの色合いにより決める。何となくタカノツメを付けているときは、ちょっと辛口で気分的にも過激になりそうである。そのせいか最近はシシトウを選択することが多くなった。