壮大なる実験(その後)

 1年半という膨大な時間と、それに費やしたとんでもない労力の結果が、何事もなかったかのようにあっさりと否定されてしまった。

 壮大なる実験は4月21日に最後の除草を行った。これでしばらくは、この菜園で雑草というものを見ることはないのだろう、と思っていた。ワクワクすると同時に、雑草に対して何か悪いことをしたような気持にもなっていた。それがなんとわずか47日であっさりと結論を言い渡されてしまった。「無駄な作業、どうもご苦労さまでした」「われわれ雑草をなめるんじゃねえぞ」と言わんばかりの状態を目にすることとなった。49万個の雑草の種子を処理したにもかかわらず、まだ恐ろしいくらい発芽してくるのである。ほとんどわいてくるといった状態である。うぅーーん、だんだんとわが菜園の土が雑草の種子に見えてきた。土だと思っていたものが実は雑草の種子の集まりであった、という感じに思えてきた。

 菜園内から雑草を一掃しようとしたにもかかわらず、わずか1か月半で元の状態では心が折れてしまう。この状態を何とかできないものか? 目をつぶって菜園内を歩くことは不可である。目を開けるとどうしても見えてしまう。この状態はもう見たくない。ではどうするか? いい案が浮かんだ。隠せばいいのである。「臭いものには蓋」「見えるものには覆い」である。そうと決まればさっそく作業開始である。畝を立て、使用する畝、使用しない畝にかかわらず、すべて黒マルチで覆うのである。そうすれば、草も生えないし、当然見ることもない。これで一件落着である。

 何も植えられていなかった菜園が一気に真っ黒になってしまった。この変貌にここを通る人は何と思うだろう。ここの菜園主が急に野菜栽培に目覚めた! と思うだろうか? それとも、菜園主が代替わりしたのか? と思うだろうか? とにかく周りの目を気にすることなく野菜作りに専念しよう。そして雑草とは仲良くしていこう。日ごろから雑草の手ごわさを十分に分かっていながら、恐れ多くも無謀な挑戦をしたことを非常に恥ずかしく思う。これからは雑草の生命力を十分理解したうえで、適度に排除しながら共存していこうと思う。