生存競争

 一見平和そうに見える菜園内でも、一部地域では激しい生存競争が行われている。収穫が終わり、次に植える野菜のために耕し整地したところには、我先にと雑草が生えてくる。雑草にとってももちろん適期がある。自分に合わない季節であれば発芽はしない。合う季節であれば、いかに早く発芽し、背を伸ばすかが勝負の分かれ目となる。周りに何もなく自分だけが存在すれば、それだけ咲かせた花の受粉率が高くなる。しかし無情にも、耕作し畝を作ったところには、菜園主が計画に沿って野菜を植える。あまり目立ちすぎると撤去されてしまうのである。いくら不精な菜園主であっても、あまりにも邪魔になれば容赦はしない。

 このような悲惨な目に遭いたくないと思ったのか、あるいはたまたま不遇な環境に育ったのかはわからないが、厳しい環境でも生きようとする雑草もいる。かれらは生きるために想像を超えた努力をしているのである。ここで紹介するのは、わが菜園内でも、ちょっと環境のよくない部分で育ったものたちについてである。通常のいい環境で育てば、それほど努力をしなくてもいいのであるが、たまたま環境が悪かったために、他よりも多くの努力をしている。その悪い環境とは、日当たりがよくない場所のことである。冬であれば周りの木は葉を落とし、雑草は枯れて跡形もない。したがって、それほど悪い環境ともいえないのである。ところが春になり少し暖かくなると、木が芽吹き、雑草は一気に生えてくる。そうすると、背丈の低い雑草たちはそれらの日陰になり、光合成すらままならない。それでも一生懸命に光を求め、地中から養分を吸収し花を咲かせる。せっかく咲いた花も虫に見つけてもらえなければ受粉できない。せめて花だけでも他の雑草よりも高い位置で咲こうとする。そこまでしてでも子孫を残そうとするのである。

 わが菜園内で、高い位置で花を咲かそうとするものが2種類ある。一つ目は、彼岸花のように花だけが一本の軸上に咲くものである。これの代表がハタケニラ(菜園日記参照)である。葉や軸はお構いなしで、花の軸だけを障害物のないところまで伸ばす。そしてそこでひょっこりと花を咲かせる。通常、障害物のないところでは、40~50cm程度の花の軸が、障害物があると90cmにもなる。もう一つは、通常の花の咲き方をする雑草である。軸の所々から枝が出てその先に葉や花を咲かせる。これの代表がカタバミである。日当たりのいい場所では15~20cmであるが、周りに高い木や雑草があると50cmにも伸びる。

 ここまでエネルギーを無駄に使ってでも子孫を残そうとする雑草たち。その努力が完全に裏目に出ていることには気がついていない。じっと木や草の陰にいれば撤去されずに済んだのである。目だったために、花だけでなく本体までもが、菜園主に撤去されてしまうことになるのである。努力しているものには、それなりの評価をしようと思うのであるが、まだそこまで人間として成長しきれていない。

 菜園主と雑草間の平和協定の締結には、まだ相当な時間がかかるものと思われる。まずはその前段として、平和協定締結に向けての予備的対話が必要となる。

<ブルーベリーに対抗>

 

<頑張った結果>

 

<何と90cm>

 

<カタバミもごらんのとおり>