4.勘定

 飲食代金の支払いに関して、大きな店では出入り口の近くにレジスターを備えた一角が設けられている。小さな店では、店主1人で調理、配膳、レジ係まですべてこなさなければならないため、安全面から店の奥にあることが多い。注文した品物がすべてそろうと、おもむろに勘定書きを挟んだプレートを持ってきて裏返して置いていく。食事が終われば、それを持ってレジまで行き、飲食代金を支払って出て行く。このパターンが適合しない場合が多い。神戸ではレストランだけでなく、居酒屋でもテーブルで支払う形式の店が増えてきた。欧米あたりでは普通であるが、これを日本でやられるとちょっと困る。食事が終わり、勘定書きを持って出口近くへ行き支払いをしようとすると、「お客様、そのままお席でお待ちください。お支払いはお席でお願いします」と言われるのである。なんだか都会へ出てきた田舎者が、初めてレストランに入ったはいいが、システムが分からなくて恥をかいたような感じである。良心的な店は、テーブルの上に名刺大のものがクリップに挟んであり、そこに「お支払いはテーブルでお願いします」と書かれている。これなら安心である。ゆっくりと、回りを気にせず食事ができる。そうでないと、先に出る人をきょろきょろと見ていなければならない。注文した品がすべてそろった後、勘定書きが来ない場合は特に要注意である。つい先日などは、勘定書きが来なかったので、てっきりテーブルで支払いをするものだと思い込み、「勘定をお願いします」とかっこよくやってしまった。ところがこの店は、入り口横の目立たないところにレジがあり、客のテーブル番号を書いた勘定書きが置かれていたのである。そうとは知らず、「勘定をお願いします」とやったものだから、従業員はレジまで勘定書きをとりに行かなければならなくなった。それだけでは済まず、支払われた金額を持って再度レジへ行き、お釣を持って戻ってこなければならない。大変な作業増である。いやな客だなあと思われたことは間違いない。しかし、領収書にはしっかりと消費税以外に10%のサービス料が含まれていた。レジまで2往復して飲食代金の10%はちと高い。それ以外にサービスらしきものは受けていない。あと2往復ぐらいは要求してもよかったかもしれない。いろいろと恥をかいたり、迷惑をかけたりするので、最近では店に入るとすぐにレジカウンターを探してしまう。見つけるとほっとしてしまうのが情けない。

 レジカウンターでの支払いであれば、店側と支払う個人だけが金額を知ることになり、周りに知られることはない。しかし、テーブルでの支払いになると、かなり広範囲に知られることになる。女性同伴の場合などはちょっと気まずく感じるのではないだろうか。おおよその金額は分かっているとはいえ、目の前で支払うわけであるから、なんとなく恩着せがましくなってしまう。テーブルではなくカウンターに座ったときなどは、隣の客にもはっきりと分かってしまう。恥ずかしくない金額のものを食べろよ、ということか? そういえば、ランチを注文するときの客を見ていて面白いことに気がついた。2種類ある場合は、高い方、3種類あれば真中を注文するのがカップルである。女性同士はしっかりしている。必ず安い方である。

 テーブルでの支払いということになると、単にレジスペースの節約だけではなく、欧米方式のシステムがすでに導入されているのかもしれない。つまりチップである。まさかとは思うが、知らないのは本人だけということはないだろうか。ちょっと心配になってくる。この次はそのあたりのことも気をつけて観察しておこうと思う。

 勘定書きは来ないしレジもない。このような店はちっちゃな紙切れに、電卓で計算した合計金額を記入し客に提示する。その金額を支払うと「ありがとうございました」ですべてが完了する。こちらの手元には何も残らない。手書きの紙切れには通し番号が入っていないので、売り上げをごまかすことも可能である。これはひょっとして税金対策? もう少し、食べることに集中できるようなシステムにしてもらいたいものである。