147.ロウマッチ
わがアトリエで使用しているダルマストーブは年代物である。30年は使用している。その間に芯は3回程度取り換えている。その芯がいまだに市販されていることに驚く。芯が手に入らなくなったら廃棄処分にしようと思っているのだが、なかなかそうはさせてくれない。実用性は十分に発揮してくれるのであるが、難点が一つだけある。それは電池式の着火装置が壊れていることである。芯を出し、着火用のレバーを押し下げると燃焼筒が持ち上がり、そこへ赤く熱せられたニクロム線がくっつき火が付くようにできている。ところが断線したらしくニクロム線が熱せられなくなってしまったのである。修理不能のためこの着火作業を人手で行わなければならないのである。その程度のことかと思われるかもしれないが、これが結構大変なのである。場所が狭いためライターが使えないのである。そこでいろいろとさがしたところ「チャッカマン」なるものを見つけた。通常は問題ないのであるが、早朝はご機嫌が悪い。零度近いアトリエではなかなか着火しないのである。カチッ、カチッ、カチッ、何度やっても火がつかない。本体を温めてやるとつくのであるが、冷えているとなかなかつかない。しばらく我慢して使用していたが、我慢も限界になりリタイヤを通告した。今では夏の蚊取り線香専属になった。こちらでの使用は非常に満足している。
さて、チャッカマンの代用をどうするかという問題が残ったままになっている。ここは原始的ではあるが、マッチを使うのが最も手っ取り早く、かつ確実であるという結論に達した。早速ホームセンターへ行き、懐かしい「ABC」マッチを購入した。子供のころに花火をするときに使用したあのマッチである。お徳用ではなく小箱を購入した。お徳用にはかつての苦い思い出がある。線香花火の火玉がマッチ箱に落ち、大炎上したことがあった。これは花火よりも迫力があった。
季節も暖かくなり、そろそろストーブの必要がなくなってきたころに楽しみが待っていた。使用済みのマッチの小箱を取り置いていたのである。これをどうするか? 子供のころに見た西部劇でのシーンを再現するのである。カウボーイが靴底でロウマッチを刷り、煙草に火をつけるのである。とはいっても、皮底の靴はないし、煙草はやめているし、そのままの再現ではなく、ロウマッチの部分だけである。実際に火が付くのかどうかを確認してみたいのである。マッチ箱の側面の赤燐に水を付け、カッターナイフでこそぎ落としていく。2、3箱分が集まったところで、それをマッチの頭に適量を載せて乾かす。完全に乾いたことを確認して完成である。ちょっとざらつきのある木にこすりつけると、見事に着火した。
この勢いを見てもうひとつ思い出がよみがえった。スキー場での強風のなかでの煙草である。ライターは全く用をなさない。そこで役立つのがマッチである。マッチの頭の部分が燃えている数秒間だけである。これは強風でも消えない。ただし、あの臭いは絶対に体に悪いと思われる。煙草が体に悪いのだから大した問題ではないのかもしれない、と思い直し変に納得していたことを思い出す。