144.有効期限

 世の中のほとんどのものに有効期限が設けてある。理解できるものもあればそうでないものもある。薬や見積書といったものに書かれている有効期限については理解できる。薬の効能や建設資材の値上がり等で、記載内容を保証できなくなる恐れがあるからである。これらに関する有効期限は非常にありがたい。免許証やパスポートに関しても理解できる。

 しかし、どうしても理解できない有効期限というものも存在する。数年前、コロナウイルスがまん延し、不要不急の外出を自粛するような期間が長く続いた。とはいえ生活を支えるためには働かなくてはならない。なるべく人との接触を最小限にするため、在宅勤務などという措置も取られた。このようにしてまん延するコロナに対応してきた。それ以前であれば、出勤前にスタバやタリーズ、ドトールで1時間程度読書をしていた。その習慣も中断せざるを得なくなった。自分自身が感染することはもちろん、家族、特に高齢者へ感染させることを恐れて行かなくなった。

 ようやくコロナも落ち着き騒がなくなったので、恐る恐る出かけて人の少ない時間帯に入ってみた。確か財布のカード入れにプリペイドカードが入っていたはずである。ごそごそしながらもスタバのプリペイドカーを見つけた。かつて使用していたので金額はそのまま残っているはずである。会計でカードを出し支払いをした。残金はまだ数千円残っていた。なんとなく得をした気分になった自分がいた。気をよくしスタバでしばらく読書をした。後日タリーズへ行ってみた。こちらもかつて使用していたプリペイドカードがある。これで精算しようと出すと、店員さんから「このカードは有効期限が切れているので使えません」と言われた。驚きである。スタバでは使えたがタリーズでは使えない。もちろん発行会社が違うので一概に比較することはよくないが、とにかくびっくりである。早速裏面を読んでみると、確かに有効期限が書いてあった。最終使用日から2年を経過すると失効する、となっていた。使う側からすると最後に使った日付を覚えていない。発行する側からすると、そんなに長く使わないならプリペイドカードを作るなよ、ということなのか? では、なぜタリーズが使えないのにスタバは使えたのか? こちらも裏面を見ると書かれていた。有効期限は3年となっていた。この1年の差が今回の悲劇を生んだのである。

 ここ数年間の日常は通常と違う非日常的な日々であった。これを勘案するならば、有効期限にもう少し幅を持たせてもいいのではないかと思う。確かに、カードには有効期限が表示されているのであるから、それを怠ったほうに責任は存在する。おそらく数千円の残金であろうとは思うが、そのカードは金銭と同等なのである。それを何の通告もなく無効にしてしまうことに疑問を感じる。せめて一報が欲しかった。それができるような対策を切に願う。

 カードの裏に書かれた小さな字ではあるが、それを見落とすことによる契約社会の恐ろしさを改めて実感した。