ショルダーバッグ

 このショルダーバッグは革製の変形雫型である。ショルダーバッグというと角型や馬蹄形などがあるが、これでは個性を主張できない。個性を主張するためにはそれなりの形状が必要である。そこで作ったのがこの変形雫型である。これは適度に体にフィットする。ショルダーバッグの欠点は、すぐに肩からずり落ちることである。これを少しでも解消するために、肩にあたる部分はバックスキンを使用している。このざらついた皮がずり落ちるのをいくらかは防いでくれる。このようなちょっとした気遣いが市販品には欠けている。結局、作る側が、自分の作ったものを使っていないことが原因であるように思う。使っていれば、どうすれば使い勝手のいいものが作れるかがわかるはずである。内外のポケットについても、自分の使い方に合わせて位置と形状を決められるので使い勝手がさらによくなる。また、使いながら、必要なものを追加していくので、益々便利になっていく。

 この皮は表面が防水加工されているので、雨の日でも安心して持ち歩ける。この点は非常にありがたい。ただ、難点が一つある。それは、1枚皮ではなく量り売りの皮であるということである。布で言うところの端切れである。切り落としの皮を集めてパックに入れ、安く売られているものである。したがって、すべてが同一の品質ではなく、大きさ、皮のなめし具合、部位がすべて違うのである。バッグの内側のポケットなどであれば、見栄えの悪い皮でも使えるが、表面はそうはいかない。それなりのものを使用したいと思うのだが・・・。じっくりと全体を見渡すと、質感の違いが一目瞭然である。

 実は、これはテスト的に作ったもので、これを元に型紙を修正し、本格的なものを作る予定であった。しかし、気力が萎えてしまった。理由は針を通すための穴あけにある。手縫いのため、針を通す穴(皮は硬くて直接針を通すことができないので、前もって器具で穴をあけておく)を数千個あけなければならないのである。これをもう一度行うのかと思うと、この試作品で十分な気がしてきた。特別見栄えが悪いわけでも、使い勝手が悪いわけでもない。愛着も十分に沸いている、ということでこれをもって完成品とすることにした。

 革製品を使う上で、最も重要なことは手入れである。手入れをしっかりすれば、すばらしい状態で長持ちさせられるだけでなく、重厚感さえ生まれてくる。それができないのであれば、決して革製品を持つべきでない、と思っている。なぜなら、みっともないからである。バッグにしても靴にしても、擦れて色が剥げ、みすぼらしい状態になるからである。いくら高級品でも、精神的な貧しさが表に出てくる。材料費1,000円のこのバッグでも、手入れをしっかりとしていれば、剥げたブランド品よりもはるかに見栄えがするのである(これはあくまでも本人の感想です)。