知足

 家庭菜園で最も悩むのは、どのような種類の野菜(果樹)をどのくらいの量栽培すればいいか? ということである。簡単そうで最も難しい。食べたいものをピックアップし、菜園内の空きスペースに詰め込めばいい、というものではない。連作障害を避けながら、長期的に土地を有効活用し、かつおいしそうな野菜で家族の食卓を潤すものを選ぶ。その際、検討しなければならない事柄は、その野菜の収穫期間と量である。例を出すと「オクラ」である。1本の木で3日に1本収穫ができる。これを3本植えれば、おおよそ3日で3本収穫できる。これを食べようと思えば、1週間保存して6本を食べるとちょうどいい。しかし、鮮度はかなり落ちることとなり、家庭菜園のメリットがない。かといってこの倍の苗を植えれば、2か月余りの期間は週に2度オクラを食べ続けなければならない。これはかなり苦痛である。続いて、「トウモロコシ」である。これは収穫が同時で、1回で終わる。植えた数だけ収穫できるのでわかりやすい。トウモロコシは他家受粉なので、複数をかためて植えれば質のいいものが収穫できる。多く収穫すれば、加工して冷凍保存という手がある。無駄にすることがない、かなり優秀な野菜である。「ナスビ」は夏野菜として人気者である。2~3日に1個ずつ収穫できるのでそれほど気にすることはない。食べ方もいろいろとアレンジでき食べ飽きるということもない。1本の木で十分家庭の食卓を潤してくれる。「キュウリ」は要注意野菜である。種類にもよるが非常に実付がいい。ほとんど毎日収穫できる。「シシトウ」や「ピーマン」は長期間にわたり大量に収穫できるのでこれも要注意野菜である。

 さてここで書いた例は、1本の木がそれぞれ自分の責任を全うしてくれた場合である。購入した苗によっては、全く期待を裏切ってしまうものもある。ほとんど実をつけない。実をつけても小さく貧弱で美味しくない、というものがある。ホームセンターでじっくり苗とにらめっこをして、最上のものを選んだつもりでも、時として失敗がある。あくまでも見た目だけの判断で遺伝的なものまではわからない。苗は見た目が7割程度? といったところか。1品種1本で栽培する怖さはここにある。この苗に期待を裏切られると、そのシーズンはそれで終わりである。ということで、保険をかけて2本栽培すると、今度は収量が多すぎて食べきれないということになる。

 もう一つ収穫量を左右するものに虫と鳥がいる。これは思った以上に害を及ぼすし、なかなか侮れない存在である。ブルーベリー、イチジク、ブドウなどは鳥が一度味を覚えると、毎日のようにやってくる。しかも、早朝にやってくるので、起きたときにはきれいさっぱりなくなっている。虫の害でひどいのは、ピーマン、トマト、サツマイモそれにピーナツである。トマトは大玉の場合、収穫する数が少ないので、被害が甚大になる。そこでわが菜園では、数量の多いミニトマトのみを植えている。これなら被害を受けても収穫量はそこそこ確保できる。問題はサツマイモとピーナツである。これは土の中で実になるので、収穫するまで被害がわからない。秋に掘り上げてみれば、かじられたり殻が穴だらけということもある。

 結局、植物を栽培するということはこういうことなのである。こちらの思惑通りにいかないことの方が多いのである。それに対して対策を立てると、たいてい反対の結果が出る。苦労の割には報われないのである。何もせず、ただただ成り行きに任せ、最後は収穫したものに対して「足るを知る」ということがベストなのかもしれない。