ミズナの爆発

 菜園内の一角でミズナが育ちだした。種を蒔いたわけではない。おそらくこぼれ種だろうと思われるが、収穫することもなく放っておいた。見るたびに大きくなり、とうとう食べようと思う気が起こらないくらい大きくなってしまった。では、引き抜いて処分するか・・・、というわけにもいかない。菜園内での生産物はそれなりに有用な処理をするというのが基本である。ここまでくると、残された可能性は種を取ることぐらいしかない。

 春になり暖かくなると、ミズナの中心あたりからとう立ちが始まり、その先に黄色い小さな花を咲かせ始めた。アブラナ科の花はみんな同じように黄色(白い花もある)で小さな花を咲かせる。このアブラナ科の花の総称を菜の花という。これらは特有の香りを持っている。近づくとその香りが一層強くなる。初めのころは可憐で可愛い花だな、菜園が一気に明るくなったなと喜んでいた。ところが、花があちこちから次々と咲きだし、直径が1mにもなるくらいに広がってきた。狭い菜園でこれだけのスペースをとられてはたまらない。広がった花をひもで束ねて、それなりの大きさにまで絞ったがそれでもまだ大きい。見た目はかなり立派な花束といったところである。もう4月の半ばであるというのに、花は満開に近い。軸の下の方には小さな種のさやが付いている。種が完熟するには、まだしばらくかかりそうである。もしこれらがすべて完熟した種になると、ものすごい量になることは確実である。わが菜園中を菜の花畑にするのに十分な量である。

 ここで問題が一つ発生した。収穫物は確実に処理をするという基本にのっとれば、この種もなんとか利用しなければならない。栽培用の種にすれば、百年分程度では済まないくらいの量になる。かといって菜種油を絞るほどの量でもない。さてさてどうしたものか? 

 6月に入ると茎が枯れ、いよいよ収穫の時が来た。ブルーシートを広げ、そこへミズナを茎ごと切り取って置いた。ブルーシートで包み、揉み、叩いてきれいにさやから実を取り出した。ゴミを吹き飛ばし、実を集めてみてびっくりである。あれだけ長期間にわたり、広い場所を占領し、期待をさせてきたが、収穫した種はわずか猪口に1杯である。大きく期待を裏切られ、しばし茫然である。しかし、よく考えれば、ほっとしたところもある。これだけの量なら何とか処理が可能である。

 いろいろと思案していると、からし菜の種でなくても粒マスタードができるような記述があった。これは早速やってみる価値がある。菜種、ビール、ワインビネガーをそれぞれ適量混ぜて冷暗所で保存。菜種が沈んだ頃に塩を適量入れてすり鉢で適度にすりつぶせば出来上がり。数日寝かせると角が取れて美味しさが増す。出来上がったものは冷蔵庫で保存すればしばらく持つ。美味しい調味料の完成である。

 

<ミズナの乱れ咲>

 

<ちょっと大きめの花束>

 

<さやが付きだした>

 

<ものすごい数のさやが・・・>

 

<どのくらい実が取れるかな?>

 

<たったこれだけ・・・>