焼き栗

 以前ひまつぶしのコーナーで我が家のストーブについて書いた。今回はこのストーブのさらなる便利な使い方について書いてみたい。じっくりと煮物をするときには最高の火力である。コトコト、グツグツと煮ることで最高のでき上がりとなる。冬場は特に焼き芋をつくるのに最適な火加減である。直接火が当たることなく、アルミニウムのプレートが熱せられ、その熱で焼き芋ができる。適度に水分が抜け、最高に旨い焼き芋ができる。

 焼き芋に味をしめて、先日は焼き栗を作ってみた。焼き栗の基本は栗の尻の部分に切り込みを入れて、破裂するのを防ぐことである。しかし、今回購入した栗は、先端の部分が少し割れた状態のものが多かったので、そのままストーブの上に乗せた。10分もすると栗の焼ける香ばしい香りがし出した。順調に焼けていることを匂いが知らせてくれる。・・・と、思ったその瞬間に、最近ではほとんど聞くことがないような大音響がとどろいた。机に向って作業中であったので、飛び上がるくらいびっくりした。斜め後方から大音響とともに、軽い衝撃が上半身に降りかかった。ただただ驚くばかりで、何が起こったのかしばらくわからなかった。そして周りに飛び散った細かい破片を見て栗であることがわかった。ものの見事に砕け散っていた。大きさは数ミリで一部の方向を除いて、あとはまんべんなく飛び散っていた。上半身の服、机の上、本、PC、壁等に無数に栗の破片が付いている。取ろうとすると、柔らかい栗が付着物に押し付けられさらに汚れが広がる。仕方なくじっと我慢をして、飛び散った栗の破片が乾くのを待った。数時間後ぽろぽろと取れる栗の破片を回収して回った。ここは冷静な判断が功を奏した。焦って清掃しなくて正解であった。

 それにしても、たった1個の栗の爆発ではあるが、その威力は相当なものである。飛び散った破片を見ていると、とても1個の栗とは思えないくらいの量である。卵白をホイップすると数倍の量に膨らむが、栗も破裂すると実がふくらみ空気を含んだ状態になるので量が数倍に増しているのであろう。

 焼き栗の場合は、必ず栗の尻に切れ目を入れるという基本中の基本をしなかったことで、栗の暴発を招いた。部屋中が栗だらけになっただけで済んだからよかったものの、万一のことを思うとぞっとする。いくらほとんどの栗の先端が割れているとはいっても、すべてがそうであったわけではない。たとえすべてが割れていても、基本は守るべきであったとつくづく反省することしきりである。

 人間として生きていくうえで、他人に迷惑をかけないために基本を守るのは当たり前である。それと同時に自分の身を守るためにも基本に忠実でなければならない、という当たり前のことを栗が教えてくれた。感謝!感謝!である。