調理用トマト

 わが菜園では毎年7~8種類のミニトマトを栽培している。大玉トマトは害虫が発生したときの被害が大きいので栽培を控えている。5月の連休前後になるとホームセンターには、各種苗会社が生産した多くの種類のトマト苗が並ぶ。例年決まって買う種類もあれば、やや冒険をして珍しい種類の苗を買うこともある。美味しければ翌年の購入候補になるが、失敗すると2か月近く苦痛を味わうことになる。

 今年は8種類の苗を購入し栽培した。全体的な評価をすると、猛暑で収量が少ない上に皮が堅く食べにくいものが多かった、といったところである。中でも1種類、全く予想と違ったものがあった。「ルンゴ」という名称であった。ミニトマトや中玉トマトの並びにあったので詳しく説明札を読まずに購入した。驚いたことにそれは大玉トマトであった。幸いにも(?)害虫の被害を受けなかったため、大量に収穫することとなった。食べてびっくり、大玉トマトなら子室(注1)が5個程度あるが、これには2個しかない。種が少なく肉質なトマトである。味はけっしておいしいとはいえない。その大玉トマトが木に大量にぶら下がっているのである。絶望感が半端ではない。菜園内で収穫したものはすべて消費する、ということを原則としているからである。あらためて購入時に添付されていた説明札を見ると、「加熱で激変! とろける旨み」となっていた。生食用ではなく加熱して食べる調理用トマトであった。缶詰でよく見かけるホールトマト用のトマトである。パスタやトマト煮に使われるタイプのトマトである。

 予想外のトマトが大量に収穫できそうである。さて、どうしたものか? パスタ用のソースもいいが、これだけ大量トマトは消費できそうもない。最も大量に消費できそうなものは何か? いろいろ考えてみたが、スープにするのが最もいいような気がする。大量に作り、冷凍保存すればすべて消費できそうである。

 一定量を確保できるまで木で完熟させる。収穫後は湯むきをしてざく切りにする。ニンニクをオリーブオイルで炒めて香りを出す。そこへざく切りにしたものを入れしっかりと煮る。粗熱を取ったものをミキサーにかけ舌触りをよくする。コンソメと黒コショウで味を調える。若干煮詰め旨さをより引きだす。冷ましたのちタッパに入れて冷凍庫へ。しっかりと固まれば1回分ずつに切り分ける。食すときは加水しレンジでチンする。生食に比べると全く別物のおいしさである。適材適所、正しく使えば驚くほど効果を発揮する。それぞれの持つ特性を生かすのも菜園主の力量というものである。

 何事も思い込みではなく、いろいろと試してみることの重要性を改めて思い知らされた。「ルンゴ 恐るべし」

注1:トマトを横に切ると種の入った部分がいくつかある。これを子室といい、通常は5~7子室ある。

PS:前回つくったオニオンスープと合わせるとまた違った美味さになった。感動。

<まもなく完熟>

 

<完熟>

 

<1片でスープカップ1杯分>