ハンモック

 

 郊外のキャンプ場などで木と木の間に吊るし、ゆらりゆらりと揺られながら昼寝をする。これがハンモックのいいところであろう。しかし、キャンプ場では、頻繁に行くこともできないし、揺られて寝たいと思っても、そこへ行くまでに時間を要する。何とかこれを自宅でできないものだろうか?

 自立式のハンモックがホームセンターで売られていた。金属パイプが船形に形作られている。これへネットをかけるようになっている。値段は手ごろなものからやや高価なものまでいろいろとある。すべてに共通しているのは、高さが1m程度しかないということである。これに横たわると、もっとも地上に近くなるお尻辺りでは地上高50cm程度である。これでは壮大な夢を見ることができない。地上2m、成人の背丈以上の高さがないといけない。こうなればいつものことながら自作するしかない。この高さを実現させるには、材料に強度を持たせるため、費用はかなり高額になる。毎回組み立てるのは大変なので固定式にしたいが、そうすると保管場所がない。あれこれと案を巡らせていると、これらすべてを一気に解決できる名案が浮かんだ。ガレージの屋根から吊るせばいいのである。幸いにも、十分な強度を持っていると思われるフレームが通っている。ロープをかけてぶら下がってみたが、十分(多分?・・・)頑丈そうであった。ロープの先が輪になっていなかったのでいいが、そうであればちょっと危険な行為とみなされかねない。

 ホームセンターで丈夫そうなネットと木材、U字環(ロープをつなぐ接続部分に使用)を購入し製作開始である。ネット、ロープ、木材、そしてU字環の全てが十分な強度を有していると思われる。いや、経験上有しているはずである。完成したものをガレージのフレームに取り付けた。2mはさすがに高い。脚立に上り、ハンモックに横たわってみた。しかし、夢を見ることはない。怖くて眠れないのである。目をつぶれば、落下する姿ばかりが脳裏に浮かぶ。そのうちに揺らすのが怖くなってきた。おそらく慣れるのに相当な日数を要するだろう。いや、慣れることがないかもしれない。そんなことよりも目立ちすぎて近所の人の目が気になる。これでは本来の目的を十分に達成することができないので、高さを変えることにした。徐々に低くしながら使い勝手と快適度を確かめていくと、出来上がったものは地上高50cmであった。・・・・これではホームセンターで売られていたものと同じである。

 結局、使いやすく、かつ安心して眠れていい夢が見られるのは、地上高50cmということになる。それ以上高くなると、昇降に苦労すると同時に雑念が入り込み、精神の乱れをともなうということがわかった。最近ではこの高さでも不安になるときがあるので、下にクッションを並べている。何とも情けない作品になってしまった。積極的に作品作りに励む毎日であるが、身に危険を及ぼすものは今後はやめることにする。あまりにも優雅さとはかけ離れた姿になるので、ハンモックはガレージの奥に設置し、道路との間に車を配置して見えにくくして使用している。日々ここでたっぷりと鋭気を養っているので、次回作品は相当に期待が持てるものと思われる(これはあくまでも個人の感想です)。