トマトの食べ比べ

 今回の菜園日記は、トマトの食べ比べについてである。一口にトマトといっても、ものすごく多くの種類がある。大きさで分けると、大玉トマト、中玉トマト、ミニトマト、マイクロトマト、となる。色で分けると、赤、ピンク、黄色、青、紫色などがある。日本ではこれらのトマトのほとんどが生食用である。ヨーロッパなどは、煮込み料理に使用される調理用の品種が多い。生食では日本のものほどおいしくはない。生食用はやはり日本で改良されたものが一番おいしいと思う。トマトの品種は、毎年多くの種苗メーカーから色々な品種が売り出される。5月の連休前になると、ホームセンターではどれを買っていいかわからないくらいの品種が売り出される。どの品種も結論的には「おいしい」と表示されているからである。大玉トマトは、収穫できる個数が少ない上に栽培が難しい。特に、わが菜園のように害虫の多いところでは、半分程度は穴をあけられ収量が非常に少なくなってしまう。中玉トマト、ミニトマトは比較的簡単に栽培ができる。今回は高難度な大玉1種と、6種類のミニトマトを食べ比べてみることにする。

 トマトは菜園コラムでも書いたように雨が天敵である。雨を避けない限り、きれいなトマトを栽培することはできない。実が割れてひびが入り、それが乾燥して黒っぽい筋が残る。見るからに味がワンランク落ちるようなトマトになってしまう。敷き藁用のムギを刈り取ったところを耕し、土の酸度調整をして肥料を投入する。このようにしたところに、例年使い回しをしているビニールの覆いを付けるのである。この作業を4月中旬ごろには終えておく。

<雨除け>

 4月下旬から5月初旬になり、気温が安定してくると、トマトの苗の選択である。赤、ピンク、黄色等、色とりどりのトマト苗を購入する。今回購入した苗は、ミニトマトとして、「スイートドロップ」、「スイートミニイエロー」、「シュガープラム」、「ガンバ」、「アイコイエロー」、「アイコ」の6種類、大玉トマトは「こいあじ」の1種類である。

 トマトは本来木ではなく、つるに近い茎であるからぐにゃぐにゃで自立できない。支柱を添えてやらなければ倒れてしまう。大玉トマトは1本の木のように直立した状態で育てるが、ミニトマトは団扇のように上へ行くにしたがってどんどん広げていく(というよりは、手入れが行き届かないので勝手に広がってしまう)。ミニトマトはつる植物と同様である。無数に出てくる枝を支柱で支えるのは不可能である。そこで利用するのがネットである。10cm角程度の大きな目のネットを張っておき、伸びた茎を適当にそこへ固定していくのである。トマトは生命力が強く、葉の付け根のところからどんどん新しい芽(脇芽)が出てくる。1週間も放っておくと、収拾がつかないくらい脇芽が出てしまう。したがって、適当な間隔で脇芽を摘んでやる。隣どうしがお互い邪魔にならない程度に広げていく。とはいっても最初だけで、夏を迎えるころにはどの枝がどの品種かわからなくなる。ただ、実がついているのでどうにか品種が判別できる。へぇー、このミニトマトがここまで来ているのか、といった変な感動をすることがある。これとは反対に、この品種はほとんど枝を伸ばしていないし実も少ないな、というものもある。7種類も植えると必ず1種類くらいはそういうものができる。なかなか苗のときにそれを見極めるのは難しい。持てる知識を総動員して厳選しているのであるが結果が伴わない。それくらい生き物は難しい。

<大玉トマト:こいあじ>

 

<ミニトマト:アイコイエロー>

 

<ミニトマト:アイコ>

 

<ミニトマト:ガンバ>

 

<ミニトマト:シュガープラム>

 

<ミニトマト:スイートドロップ>

 

<ミニトマト:スイートミニイエロー>

 

<ネットと脇芽>

 

 トマトは面白い性質がある。葉が3枚出ると次は実の成る枝が出る。これを繰り返すのである。大玉トマトではこの性質を利用すると、植え方ですべての実をこちら側に向けることができる。ミニトマトも同様の性質を持っているのであるが、むやみやたらあちこち枝が伸びているので、この性質はまったく関係がない。大玉トマトの場合は、一つの枝に10個程度咲いた花を4個にして実を大きくする。3個でいいのであるが、ほとんどの場合、1個は虫に穴をあけられる。それを見越して1個多く残すのである。ミニトマトの場合はそのままにしておく。適当に虫に食われることはあるが、トマトのほうで調整して実を付けてくれる。木が元気なうちはほとんどすべての花が実になるが、木に体力がなくなってくると、実の数が減ってくる。あくまでも木にまかせておけばいい。熟したものから収穫していけばいいだけである。ミニトマトは1本の木で150~200個程度は収穫できる。1本の枝に多いものだと12、3個の実が付く。ただ、茎に近いほうから熟していくので、先端まで全部が熟して枝ごと収穫することはできない。枝の先の方はどうしても時期がずれる。大玉はこれよりはるかに少なく、1本の枝に3個程度、全部で10~15個程度である。ミニトマトの苗が6本あるので900~1200個のトマトが収穫できることになる。ミニトマトは生命力が強く、木がどんどん大きくなっていく。そして雨よけビニールの天井に到達する。そうすると、ネットに固定した木の紐をほどき、木全体を下へずり下げる。そして根元の部分はとぐろを巻くようにして育てる。秋になり涼しくなると真っ赤に完熟しなくなる。味も落ちる。しかし、その時期までにものすごい数のトマトを食べることになる。ピーク時には2日に1度、直径25cmのザルに山盛り収穫できる。「トマトが赤くなると医者が青くなる」と言われるくらい体にいい。しかも、このトマトがいい酒のつまみになるのである。ちょっと塩を付けると最高にうまい。初秋までこの楽しみが続く。

<実に似合わずスタイルのいい花が咲く>

 

<アイコが2列に実を付けている>

 

<予想通り1個虫に食われて3個に>

 

<アイコが色付き始めた>

 

<赤と黄色が入り乱れている>

 

<本日の収穫はやや少なめ>

 

 さて、今回植えた品種の食べ比べである。

 まず、赤い方からである。アイコは大玉トマトに近い風味があり、適度な甘みと酸味のバランスがいい。果汁もたっぷりとあって旨い。続いてスイートドロップ。形がちょっと変わっている。へたのほうが5角形になっているが、上から見ると四角すいである。果肉が固く、果汁がほとんどない。イタリアあたりで栽培されている調理用トマトといった感じである。生食用にはあまり向いていない。名前負けである。ガンバはさっぱりとした野菜っぽい味である。ジューシーさはあるが、皮が固くトマト風味にやや欠ける。シュガープラムは皮が柔らかく食べやすい美味しさである。続いて黄色である。アイコイエローは皮が柔らかく味も優しい美味しさがある。酸味よりも甘みがやや勝り非常にいい。果汁もたっぷりとある。スイートミニイエローはアイコイエローよりも皮が柔らかい。酸味と甘味のバランスがいい。果汁が多く非常に美味しい。最後に大玉トマトのこいあじである。これはさすがに市販のトマトである。色、大きさ、味ともに商品になる。市販品と違って、完熟するまで木にぶら下がっているのでさらに旨い。これは本来のトマトが持っている風味があり、しっかりとした美味しさがある。味、香り、歯ごたえともに素晴らしい。ミニトマトにはない旨さがある。

 味に関しては、やはり大玉トマトが最高である。ただ、植え付け面積からすると、非常に効率が悪い。暑い季節に食べるトマトのおいしさを満喫するには、やはり量が必要である。そうするとミニトマトということになる。ミニトマトの中でも味に関しては、赤より黄色ということになる。しかし、トマトの最大の効力であるリコピンに関しては赤ということになる。ということで、結局のところは、いろいろな品種を作って食べるというのがベストである。

左上から:こいあじ、アイコ、スイートドロップ、ガンバ

左下から:アイコイエロー、スイートミニイエロー、シュガープラム