洗濯

 夏の菜園作業はものすごい汗をかく。うまく仕事の段取りをつけていないと、2度程度作業着を着替えなければならない。そのたびに部屋に戻っていたのでは効率が悪い。そこで、アトリエに作業着や下着を用意しておき、着替えることにしている。着替えればそのまま洗濯機へ放り込み、汚れを落とすのである。真夏であれば、昼に洗濯すれば、少々分厚いエプロンでも夕方には完全に乾燥する。首に巻いたタオルも含めると相当な数になる。たまに天候が悪く、ただただ蒸し暑い日もある。このような日は、夕方までに乾かないことがある。そうすると、作業後の夕方に洗濯したものは干すところがなくなってしまう。何しろ狭い庭に物干し竿を設置しているので、これ以上増やすことができない。これを明日までに乾かしておかないと、作業に支障が出る。

 さてどうしたものか? 干すためのスペースがないのである。これ以上物干し竿を増やすこともできない。いろいろと考えてみたが、ないものはないのである。考えても増えるわけではない。しかし、考えてしまう。考えれば何とかなる、というのが今までの経験でわかっている。最善のものが出てくるとは限らないが、それなりのものは出てくる。しつこく、しつこく考える。 ???・・・???・・・ やはり考えるものである。ここはファッションセンスがモノをいう。一つずつ、ハンガーや物干し竿に吊るす、という発想が邪魔をしていた。重ねればいいのである。重ねるといってもタオルを3枚重ねる、シャツの上に上着を重ねる、といった重ね方ではない。ハンガーに上着を掛ける。そのハンガーにズボンとエプロンを掛ける。人間が服やズボンをはく要領である。こうすれば1本のハンガーとそのスペースで1回分の作業着が干せる。ついでに作業用の帽子も干せる。これで無事完了となる。しかし、ここまでくると、何となくこれでは満足できなくなってくる。効率、合理性という面では完璧であるが、遊び心を感じない。これが入るかどうかで、笑いや和が生まれる。そうすると、洗濯物ではなく作品になる。人間性や芸術性という品格を備える作品になるのである。そこで思いついたのが、菜園用の長靴である。ついでに誘引紐、剪定鋏も付ける。洗濯物とは全く関係はないが、これを添えることで、ちょっと見には人に見える。しかしじっくりと見れば人ではない。一瞬ドキッとするところに面白さがある。新しい作品の完成である。賞味期限は明日の昼までである。

<明日までに乾きますように!!>