対決

 わが家を訪れるスズメたちについてはかつてここで記載してきた。慣れというか、ずうずうしくなったというか、ここに餌があるのが当然という態度が目に余るようになってきた。菜園作業で外に出ると、どこで見ていたのかわからないが一斉に集まってきて、隣家の屋根に集まりこちらの様子をうかがっている。うかがっているというよりは「早く餌を出せ」と圧力をかけているように見える。しかし、一切声には出さない。ただ、じっとこちらを見つめて勢ぞろいしているのである。距離にして5、6mであるが、屋根にいる間は逃げることはない。とにかく無言の圧力をかけ続けるのである。

 餌の供給は、冬や大雨で餌が十分に摂れないときに、空腹でひもじい思いをしないように、という趣旨で始めた。今もそこは変わっていない。したがって、常時十分に餌箱が満たされているわけではない。気候のいい時期や天気のいい日は、自ら餌をとるように促す意味を込めて供給しない日が多い。

 3月も中ごろになるとイチゴの葉が立ちだす。ロゼット状態から解放され、花を咲かせいよいよ春本番であることを知らせてくれる。それと同時に、こちらもイチゴが実をつけられるように準備を開始する。プランターにもみ殻や藁を敷くのである。翌朝、プランターを見てびっくりである。いたるところに直径10cm程度の穴が開き、敷き藁やもみ殻がプランターの下部一面に落ちている。その量たるや相当なものである。イチゴに土がつかないようにと敷いてにもかかわらず、場所によっては土がむき出しになっている。スズメは体についた羽虫などを除去するために、水浴びや砂浴びをすることはよく知られている。しかし、敷き藁浴びは聞いたことがない。全く効果がないことは明らかである。それでも毎日やってきては敷き藁浴びをする。それを相当な数のスズメがやっていると思われる。あちこちに穴が開き敷き藁が落ちている。落ちた敷き藁をあつめ、再度敷き直しである。冬場に育てた小麦から収穫した貴重な麦わらなのである。

 スズメが入らないようにネットで囲った。これでもう安心だとは思ったが、過去にブドウやブルーベリーでカラス、ヒヨドリとの苦い経験がふとよぎった。翌日その嫌な予感が的中した。完全に覆ったわけではないが、ほぼ不可能であろうと思われるところまでは覆ったが、それでも入り込まれてしまった。こうなるとプランター全体を完全に覆ってしまう以外にこれを防止する手立てはない。目の粗いネットではその上から敷き藁欲をされると飛び散ってしまうので、飛び散らないように目の細かいネットを探した。あったのは寒冷紗であった。これなら上に乗って敷き藁欲をしたとしても、全く飛び散ることはない。これぞ完璧な対策の完成である。スズメとの対決は菜園主の圧勝で終息することとなった。

 ・・・プランターを寒冷紗で完全に覆い、スズメの敷き藁欲を防止することはできたが、このネットの目は0.7mmである。これでは受粉を助けてくれる蝶やミツバチが入ってこられない。しぶしぶ取り外すことになってしまった。いろいろ苦労をしたが、結局はスズメの粘り勝ちである。食べ物に対する執念は相当なものである。

<エサはまだか?>

 

<これで完璧!>

 

<敷き藁浴び1>

 

<敷き藁浴び2>