34.シャツ

 年々日本の夏は暑さが厳しくなっているように感じる。同時に暑い期間も長くなっているように思う。9月下旬、・・・いや、10月に入っても暑い日がある。日中の暑いのはいいとしても、朝夕の暑いのはかなわない。せめてこの間は、ヒンヤリとまではいわないまでも、汗が出ない程度まで気温が下がってもらいたい。汗かきにとって夏は大変である。普通のハンカチではとても間に合わない。タオル地のちょっと厚めのものでないと、汗をふききれない。街中を歩く時は、適当な間隔で冷房の効いたところを歩き、必要以上に汗をかかないようにしている。そこで汗を引かせてから、再度歩き出すのである。しかし、最近はどこへ入っても節電のため、以前のように温度を下げていないので、汗が引くのに時間がかかる。

 簡単に涼しさを得られないものかと、デパートをうろついていると、「涼感シャツ」「冷感シャツ」なるものが売られていた。いろいろなメーカーが出しており、基本的には、編み方が凸凹していて、肌に接する部分が少ないために、べとつき感がないというもの。もう一つは、吸湿性が良く、早く汗を外に出してしまい、なおかつ乾燥が早いというものである。中には熱伝導率のいい素材を使っているというものもある。いずれもセールスポイントは通常の肌着を着けた場合に比べて、クールな着心地をアピールしている。この際、少しでも涼しく感じられればいいだろうということで、早速それらを買って帰り、翌日から試着をしてみた。涼しく感じたかというと、まったくその感じはない。毎日が同じ温度や湿度ではないからはっきりと区別がつかない。もっと言えば、気温が35℃にもなると、空冷・水冷で体の表面を直接冷やさない限り涼感や冷感は得られないということである。涼しくはならなかったが、汗をかいても肌にべったりと密着しないので、そういう意味ではなんとなく気持ちがいい。涼しくはないがべとつき感がないのはいい。これはかなり気に入っている。気分までサラサラしてくる感じである。

 冬用で面白いと思ったのは、体から出る水分で発熱するというものである。某メーカー品は、今までのシャツのような保温だけではなく、シャツ自体が発熱して体を温めるという。体内から発散された水蒸気を利用するらしい。そうすると、暖房の効いた部屋や走ったりして汗をかくと、さらに発熱し、その汗でまた発熱するということにならないのか。この繰り返しが、脱水状態になるまで続くのだろうか。これは興味があるが、暑がりの人間にとっては全く必要としないので、いまだに購入は考えていない。暑いから汗をかくのであって、その汗で発熱してもらっては困るのである。

 いろいろとやってはみたが、汗をかかないための対策にはいいものが見つからなかった。そこで、汗をかいた後の対策へと方針を変更することにした。これも同じく多機能シャツ売り場にあったのであるが、「抗菌・消臭」シャツというものである。これに関しては、理屈はいらない。効果のほどは自分では分からないが、おそらく、周りはなんとなく“さわやかなおやじ“という目で見てくれるのではないだろうか。無味無臭、無色透明、人畜無害、これぞ高齢化時代におけるおやじ族の極意である。