木製湯呑

 

 アトリエの材料置き場に中途半端な大きさの角材があった。いたるところに黒い筋が入っている。国産の木ではないようだが名称は不明。さてこれをどのように加工しようか、しばらく木とにらめっこである。お茶でも一服しながら考えることにした。ここでふとアイデアが浮かんだ。陶器の湯飲みばかりで、他の材質のものはない。それならこの木を使った湯呑を作ってみようということになった。しかし、湯呑となるとかなりの深さが必要である。木工旋盤があれば簡単にできるが、手彫りでは難しい。難しければ知恵を出せばいい。そんなこんなで、無い知恵を絞りながら80mm掘り進めた。内部はややごつごつしているが、そこは見えるところでもないので良しとする。湯呑らしく高台も付けた。あとは漆を塗り水漏れを起こさないようにすればいい。しっかりと塗り固めピカピカに磨き上げた。陶器の湯飲みと違うところは2点。軽いことと熱くならないことである。湯呑が木であるため、陶器のように熱が伝わらないので、熱くて持てないようなことがない。この点は非常にありがたい。熱が伝わらないということは内部のお茶も冷めにくいということである。ゆったりと熱いお茶を飲むことができる。非常にありがたい湯呑である。