トウガラシ(その2)

 トウガラシは香辛料として、非常に好きな食べ物である。毎年ストックを確認し、切らさないように栽培している。数年前に王建という種類の韓国唐辛子を栽培した。実の大きさは12~13cmの大きさがある。しかし、辛さはタカノツメの半分程度である。半分といっても辛さは十分である。この木が異常に大きく育ち、晩秋ごろまで実を付け続けた。おかげで、ものすごい数の実が収穫できた。今のペースで消費していれば、10年経っても消費しきれない量である。当分はトウガラシの栽培はしなくて済みそうである。それよりもこのトウガラシをどのようにして消費するかである。ミルで細かく砕き一味唐辛子、熱したゴマ油を投入しての辣油、レモンの皮とすり潰してレモントウガラシ(柚子胡椒)、調味料の辛さ補助用としてニンニク醤油やオリーブオイルへの漬け込み。たくあん作りの糠に混ぜて使用。と、まあこのような使い方をしているが、これでは到底消費しきれない。数年後には辛さが抜けてしまっているかもしれない。何とか大量消費を考えなければならない。

 家庭菜園での最大の悩みは害虫である。これらの撃退にトウガラシを使用してみた。焼酎にトウガラシを漬け込み、辛味成分を十分に引き出す。そのトウガラシ焼酎を薄めず霧吹きに入れ害虫に噴霧する。さて効果のほどはどうか? 効果てきめんである。秒殺である。あっという間に害虫は木から落下した。しめしめ、いいものができた。これで害虫も怖くない。あちこちの木や葉に付いた害虫にかけ回った。ふと気が付くと、結構な焼酎の消費量である。何となく寝酒で飲んだ方がいいような気がしてくる。ちょっと薄めて使用してみたが、効果は半減である。原液で落下した虫をよく観察していると、しばらく動かなかったがその後復活していた。びっくりして落下したのは、アルコールかトウガラシの辛さなのかはわからない。そもそも、アルコールやトウガラシを感じることができるかどうかもわからない。

 再度使用方法を考える必要に迫れることになった。トウガラシを乾燥させた後、回収するときに気が付いたことがある。トウガラシを触った手で顔を触ると、その部分がカッカ、カッカ、ヒリヒリしたのである。目の周りを触ろうものなら、涙が止まらなくなってしまうほど肌を刺激する。これを思い出したのである。冷え性で手や足の先が冷たくてしょうがない。手はなんとか保温のしようがあるが、足はどうにもならない。分厚い靴下をはくと靴が履けない。靴用のカイロはしっくりこない。そこで、トウガラシパウダーをガーゼで包み靴下に入れてみたところ、その効果(?)にびっくりである。最初は何の変化もなかったが、徐々にヒリヒリ、カッカ、カッカ、そのうちにヒリヒリチクチク、その後はヒリヒリ、チクチク、ピリピリ、ヒリヒリ、チクチク、ピリピリ・・・。暖かさを通り越して痛さだけが続く。あまりの痛さに耐えられず取り出したが、そのあとも3時間、ずっと続く痛さに汗がたらたらである。じっくり寝ようと思った講演会で一睡もできないままであった。かといって、講演が聞けたかというと、これは全く耳に入らなかった。眠気防止には最適な方法である、ということが分かった。ようやく痛みが落ち着いてほっとしたところでまたまた試練である。風呂に入ったところ、思わず悲鳴を上げてしまうくらいの痛みが走った。記憶にある痛みの中では最強である。弁慶の泣き所を打った時、足の小指をテーブルの脚にぶつけた時等、比較にならない。痛さの種類がまったく違うのである。これらの痛みは息を止めてグッと力を込めて耐えることができる。しかし、風呂での痛さは、ギャーとわめきながら走り回る痛さである。痛みの系統としては、正座でしびれている足を叩いた時の痛さである。そしてその強さは、数十倍あるように感じる。お湯の中では秒殺である。

もう二度と冷え性対策は御免である。コツコツと食べることに専念しようと思う。

<収穫の一部>