レリーフ

 

 わが家のアトリエには多くの木材が保存してある。保存してあるというよりは、ほこりをかぶって置かれたままになっている。購入当時はそれなりの目的があったのであるが、いつしか熱意が冷めてしまったのである。今となっては、その目的が何であったのかさえ分からない。木材の隅っこに貼られた値段札だけがしっかりと過去を物語っている。結構高価な木材も含まれている。

 時として、急に作品を作りたくなる時がある。何を作りたいかは決まっていない。とにかく何かを作ってみたくなるのである。早速、材料棚に目をやると、「いつまでほったらかしにしておく気だよ!」といわんばかりにこちらをにらみつけている木材が目に入った。直径20cm程度の木の株を輪切りにした木材である。きれいな木目ではあるが、中心部を少しずれたところに穴が開いている。この穴を避けて木取りをすると、小さなものしか作れない。今はそれほど小さなものを作る気分ではない。この木材を使用するとすれば、すべてを生かしきった程度の大きさのものを作りたい。しかし、穴が開いている。ならばこの穴を生かして何か作れないか? しばし熟考したのち、湯沸かし中の鉄瓶に目がいった。これで決まり。鉄瓶のレリーフを作ることにした。この穴の開いたところは一切加工せず、そのまま鉄瓶の注ぎ口にしよう。

 輪切りの木材ではあるが、株に近いところのため、木目が複雑で形も面白い。この形を生かし、中に鉄瓶を浮き彫りにした。全体が同じ色で見分けがつきにくいので、周りと鉄瓶に桐油を塗って色の変化をつけた。鉄瓶の経年変化や注ぎ口のざらつき感が思いのほかよく出ている。

 わがアトリエの材料置き場で眠っていた木材が息を吹き返し、壁に掛けられて満足そうにこちらを見つめている。しかし、いつまで待っても湯を沸かしてくれることはない。コーヒーを飲むために、本物の鉄瓶にお願いすることにした。