根力

 今回は根力について書いてみたい。根力? 何のことかさっぱりわからない。それよりも何と読めばいいのかもわからない。ということになるかもしれない。これは“ねぢから”と読んでもらいたい。

 あちこちでしょっちゅう雑草のことを取り上げている。それだけ苦労をしていることを示している。とくに梅雨から夏の終わりまでは、戦いといっていいくらい大変である。菜園へ入れば、まず草むしりである。なるべく気にしないようにしようと心がけるのであるが、どうしても目がそちらに行ってしまう。目が合えばそこは無視できない。とにかく気が済むまでむしりまくる。そのうちに、手の握力がなくなると同時に、周りの雑草の多さに圧倒され、根気がなくなって終了となる。そのせいか、毎回同じところだけがきれいに処理されることとなる。これに比べると、プランターは楽である。腰の高さ程度のところにセットされ、大きさも制限があるので、根気が続くうちに完了させることができる。

 わが菜園の土は粘土質で、雨が降った後表面がカチカチになってしまう。そのうちにどんどん深い位置までが固くなってしまう。プランターの土も同じ現象を起こす。土が固まったころに、雑草も大きくなり目立つので除草することになる。これを繰り返していたので、ほとんどの雑草の根は先端のほうが切れていた。

 暇を持て余したわけではないが、プランターの雑草が、小さいにもかかわらず目につきだしたので除草することにした。ここで大びっくりである。土がまだ柔らかいので、根が切れずにすべてすー――っと抜けてくる。えーっ、まだあるの、まだ、まだ・・・、と思うくらい続く。こんな小さな雑草であるにもかかわらず、根の長さは尋常ではない。測定してみると、地表に出ている部分の長さは2.5cm、根の長さは13cmである。なんと身長(?)の5倍の長さの根を伸ばしているのである。しかもほとんど垂直に伸ばしている。プランターに植えた植物が、水不足でしおれた状態でも、雑草がびくともしないわけがよく分かった。もう少し成長すると、おそらくプランターの底まで届き、その後は90度角度を変え、底を這いまわるのであろう。プランター内の水分の、最後の一滴まで吸収できる状態を築いているのである。したがって、プランターに生えた雑草が枯れた時は、プランター内には水分が全くないということになるのだろう。

 何気なく発芽して邪魔者扱いされている雑草であるが、恐ろしいくらい準備を整えてプランター内に居座っているのである。人生においても、見えるところよりも見えないところを万全に整えておくことが肝心である。ということを考えさせられた一件である。