ナイフ

 このナイフは渓流でフライフィッシングをするときに使用するために作ったものである。山中を移動すると、物を切ったり、削ったりする場面が結構ある。ナイフとはさみはぜひものなのである。もちろん、安全のため、持ち運び用にケースも製作してある。ナイフ本体は鋼、ヒルトは真鍮、グリップは鹿の角である。本体はメンテナンスよりも切れ味を優先し鋼とした。しっかりと焼き入れがしてあり、ステンレスより硬く切れ味がいいという特徴がある。刃こぼれしにくいように両刃にしてある。本当は片刃にしてよく切れるようにしたかったが、ここは実用性を優先させた。ヒルトは加工のしやすさと色合いから真鍮を使用した。本体とは焼き入れが戻らない程度の温度でロウ付けしてある。見た目の配色もいい。グリップは木目のきれいな木を使いたかったが、水を使うことが多いので、耐久性に富む鹿の角を使用した。渓流という自然にもよく溶け込むように思う。角自体が凸凹しているので、すべり止めにも効果がある。見た目だけではなく、グリップ内部にも安全を気遣った工夫をしている。それは、ナイフ本体をグリップ内に埋め込み、目釘でしっかりと固定していることである。これにより本体が抜け落ちるようなことは決して起こらない。グリップとナイフ本体が、完全に一体物となっているのである。これは安全面で非常に重要なことである。渓流釣りではキャッチ&リリースが基本であるため、これで魚をさばくことはない。

 ナイフケースにも安全を気遣って作っている。ナイフはベルトに取り付けて使用している。渓流の険しい場所を歩くと、滑ったり転倒することもある。このような時ナイフケースが強固でないと、突き破ってけがをすることがある。このナイフケースには、厚みが3mmある牛の背中側の皮を使用している。非常に頑強で安全にナイフを持ち歩くことができる。

 ナイフ本体もケースも使用後は十分なメンテナンスを施し、次回の使用まで安全に保管してある。