83.個人ロッカー

 人気があるのか? 嫌がらせをされているのか? 運がいいのか悪いのか? いろいろと並べてみたが、どれもすっきりとしない。スポーツクラブのロッカーについてである。1通路の左右に60人分ずつのロッカーが設置されている。つまり、120人分のロッカーが設置されており、そこにたった3人しかいないので、ガラガラのはずがギュウギュウなのである。3人が並んで使用しているのである。おまけに真ん中を使用しているので窮屈極まりない。なぜこのようなことが起こるのか? 右隣は先客で、着替え中にジムから戻ってきた。こんなにもロッカーがあるのに、うまくタイミングが合うものだと感心するしかない。しかし、これが結構頻繁に起こるのである。これは、あまりいい気はしないが、あきらめることができる。問題は左隣である。二人が並んで使用しているにもかかわらず、このガラガラのロッカールームで、わざわざ左隣を使用するのである。このロッカーは、ドアの右側に蝶番が付いているので、左側を使われると非常に具合が悪いのである。にもかかわらず、平気で着替えを始めた。思わず顔を見直したが、まったく気にするそぶりはない。悪気のない、いたって温厚そうな老人である。ロッカーの後ろの長椅子に、バッグを置き、そこから着替え一式を取り出し、並べだす。もう長椅子に座れないし、靴下をはくために足も乗せられない。ふらつきながら靴下をはくことになる。

 よくよくロッカールームを見渡してみると、ほとんどの人が毎日同じ時間に来て、同じロッカーを使っている。その原因はロッカーにある。ロッカーキーに書かれた番号は単なる管理番号であり、ロッカーの番号とは一致しない。どのロッカーでも使用できる。ただし、閉めたロッカーしか開けることはできない。自動改札を通るときの切符や定期券、プリペイドカードと同じである。改札を通過したものでないと出られないのと同じ原理である。ロッカーは4ケタの番号を付けてあるが、これが結構覚えられないのである。番号を忘れて関係者を呼び出している姿をよく見かける。したがって、覚えやすいように、電話番号や誕生日を基準にしている人が多い。隣や周りに人が大勢いてもお構いなしに、自分の決めたロッカーを使用する、という困った現象が起きる。周りも迷惑だけれども、自分自身も狭いところで窮屈だろうと思うが、4ケタの数字を覚えるよりは楽なのだろう。それとも、この番号のロッカーが、個人使用のロッカーだと思い込んでいるのだろうか? 周りの状況を見ながら、適切な判断をするという能力に欠けているように思う。目指すロッカーが使用中であれば、別のロッカーを使用せざるを得ない。その場合はどうするのか? ロッカーからひもや服の一部をはみ出させているのである。これなら一目瞭然である。結構な数のロッカーからそれらが出ている。挙句の果てが、“私物は確実にロッカーへしまってください。はみ出して占めるとロッカーキーが壊れます。”との注意書きが掲示されるほどである。

 ここはスポーツクラブである。みんな健康的な体を作りに来ているはずである。健全な肉体には健全な精神が宿るはず・・・。周りをよく見ると、健全な肉体をした人はほとんどいない。痩せすぎ、太り過ぎ、ぷよぷよ等。これでは健全な精神を求める方が間違っている。現代人にとって、スポーツクラブは体を作るところではなく、暇をつぶすところなのかもしれない。ガラガラでもギュウギュウに慣れるしかないだろう。