梅酢

 以前、このコーナーで梅干を書いた。それ以降、毎年梅干しを漬けている。最近は小梅ではなく、大梅を漬けている。時期になると、スーパーなどで梅が大量に売られている。色々な種類の梅が売られている。その中でもかなり高価になるが、南高梅はさすがにすばらしい。ブランド梅というだけの価値はある。ただ、皮が柔らかすぎて、土用干しで梅を裏返すときに、皮がザルにくっつき破れてしまうことがあるのが難点である。非常に繊細な梅なので丁寧な扱いを要求される。

 梅自体が柔らかいだけでなく、非常にジューシーである。塩漬け段階でたっぷりと梅酢が出てくる。塩揉みした赤紫蘇を入れて、梅にしっかりと赤紫蘇の色を移す。いい色合いになったところで土用干しである。梅と赤紫蘇をしっかりと天日で乾かし、同時に瓶の中の梅酢も日光消毒である。3日間干した梅と赤紫蘇を甕に入れて保存である。適度になじんだ頃、多すぎるくらい入っている梅酢を小瓶に取る。このまま甕は冷暗所で数年保存する。

 小瓶に取り出した梅酢の色はきれいな赤紫である。しっかりとした力強い酸味があり、塩味もよく利いている。今回も健康を気遣い10%の塩分濃度としたが、そのままではとても塩辛くて食すことはできない。これをどのように利用するか? 最もおいしく食べることができるのは、サラダのドレッシングである。梅酢とオリーブオイルを適量かけた後、黒胡椒を振りかければ最高のドレッシングの出来上がりである。適度な塩加減と酸味が食欲をそそる。そして、何よりもその色合いがすばらしい。自然のもので、これだけきれいな色を出せる食材も珍しい。紫蘇の紫色と梅酢が反応して見事な色に変化している。もしこれと同じ色の梅酢が売られていても、絶対に買うことはないだろう。それくらい合成着色料の使用を疑わせる色である。多くの食品に、あまりにもいろいろな合成着色料が使われているので、本物と着色物の違いが判らなくなってしまっている。非常に残念なことではあるが、「きれいな色=着色」という先入観で食品を見ているので、あまりにも見事な色合いのものは避けてしまう。

 この梅酢には、自然にもこれだけきれいな色があることを教えてもらった。