96.改善提案

 世の中には「ここをこういう風に改善してもらいたい」、「ここを変えれば非常に良くなるのになぁ」、といったものが多くある。

 医者にはいろいろな専門があり、その専門分野に関する部位に不都合が生じたときに患者として訪れる。どの専門分野に関しても、不都合が起きている以上心配の種は尽きない。検査の結果が悪ければどうしよう、あるいは非常に困難な治療が必要になる、といった不安が付きまとう。

 我慢できないくらいの痛みが出たので治療に行くのであるが、治療がさらに痛みを伴うと想像できる場合がある。現実の痛みとこれから起こる痛みのはざまで気が滅入るのが歯科医院である。歯科医院はコンビニの店舗数より多いといわれる。コンビニには頻繁に行くことがあっても、歯科医院にはそれほど頻繁に行くことはない。数の上では逆転してもらった方がありがたい。これだけ多いと、当然のように客の奪い合いということにもなりかねない。治療技術が優秀であることはもちろんのこと、客へのサービスというものにも力を入れなければ客の獲得は難しい。

 歯は脳に近いためか、振動や音、痛みが直に伝わるような気がして、余計に痛みを感じるような気がする。最近では痛みが出そうな治療の場合は、事前に麻酔注射をして痛みが出ないようにしているので助かる。これは非常にありがたいことである。歯科医へ向かう足取りが少し軽くなる手助けをしてくれる。しかし、これだけで不安や恐怖が解消されるわけではない。歯科医といえばほとんどイコール状態なのが歯の研磨機である。永遠に消えることがない恐怖を感じさせる「キー――――ン」という音である。思い出しただけで背中に冷や汗を感じる。あの音をなくせば、歯科医院というのは若干ではあるが恐怖感が薄れるような気がする。では、どうやってその音を解消させるか? これはメーカーにお願いをするしか方法はないように思う。現代の技術をもってすれば解消できないはずはないと思う。あとはやる気である。これが開発できれば増収増益は間違いない。ぜひ検討してもらいたい。もう一つの解消方法は、MRI方式である。ヘッドホンをつけて、高音量の音を流し続けて「キー―――ン」を消す。このどちらかが実用化できれば歯科医院はそれほど怖くはない。

 サービスの面から1つ提案がある。冬に歯科医へ行き、いきなり大きな口を空けさせられれば、唇のあちこちがひび割れして出血にいたる。出血しなくても思った以上に痛みを伴う。事前にリップクリームを塗り、口を大きく開け皮膚を伸ばして十分な準備をしているのであるが後半力尽きる。唇の傷は治りにくい。食べ物を食べるたびに、せっかくくっついた傷が開く。治療の途中で、唇の渇き具合を確認して、リップクリームを塗るサービスをぜひお願いしたい。

 最後にもう一点。医師・看護士は常に体調を気遣い、腸の調子を整えておいてもらいたい。治療中の患者の頭の位置は彼らの腸のあたりになる。しょっちゅう腸が「グルグル」「グルグル」と鳴れば、笑いをこらえるのに一苦労する。当人も自分のおなかがなっているのがわかるだけに、より敏感になってしまう。こんな時に限って、「キー――――ン」という作業はやっていないのである。